矯正治療法

顎変形症治療(外科的矯正治療)

顎変形症治療=矯正治療+外科手術による骨格の改善(骨格的なズレが著しく大きい場合)

歯のズレだけではなく骨格のズレが著しく大きい場合に、矯正歯科治療に加えて土台の骨ごと動かす手術を併用して、かみ合わせを改善する治療です。矯正歯科治療における歯の移動量には限界があります。かみ合わせのズレが歯の移動量の限界を超えている場合、矯正歯科治療だけでは改善ができません。このような症状の重症度が高い場合は、外科的な手術を併用して治療を行う必要があります。このような症状が認められる場合にのみ顎変形症の診断となり、保険診療の適応となります。正しくは「病名:顎変形症+主な症状記載」(連携医療機関での外科手術と当院での歯列矯正を併用した治療)と呼ばれますが「外科矯正」や「外科的矯正治療」と呼ばれる場合もあります。また、他院での顎変形症との診断は、当院では適応とならない場合もありますのでご了承ください。

顎変形症に関する初診相談をご希望の方へ(ご来院前に必ず本稿をお読みください。)

近年、顎変形症など保険適応の矯正治療に関するご相談が増えています。矯正治療は原則、自由診療であり治療費は全額自己負担、健康保険証は使えません。しかし、外科手術を併用しないと”かみ合わせ”を改善できない重度症状の場合にのみ、健康保険が適応となります。

保険適応が可能かどうかの最終的な判断には、以下の手順が必要です。

①初診相談でご来院

②後日、精密検査

③後日、検査結果の説明および診断

④保険適応の矯正治療(顎変形症など)の可否についての確定的な最終判断

※初診相談でご来院された時点では、まだ顎変形症の確定的な診断はできません。顎変形症に関する初診相談を希望される場合には、保険適応の矯正治療に関する正しいご理解を頂いた上でご予約、ご来院されますようお願い申し上げます。

顎変形症の判断基準(顎変形症が適応となるか否か)については、症状の重症度や、受診する医療機関の裁量、術者の考え方や力量、技術力によって異なります。当院の顎変形症に関する判断基準の一つは、「矯正治療による歯の移動だけでは、咬合状態の改善が見込まれない」ほどの重症度の大きい”骨格的なズレによるかみ合わせのズレが認められる場合”が必須要件です。また、症状の内容や程度により、他院で「顎変形症である」との診断が、当院では適応とならない場合もありますのでご了承ください。

お顔の曲がりやアゴの出た感じ、りんかくの非対称、アゴがない、ガミースマイルなど、見た目の症状が見られても、矯正歯科治療による歯の移動でかみ合わせの改善が見込まれる場合には顎変形症の適応とはなりません。

顎変形症の適応外で外科的矯正治療を希望される方は、サージェリーファーストアプローチ(https://s-ooc.com/surgeryfirst/)の適応となりますので、そちらのページをご参照ください。

保険適応の矯正歯科治療に関する正しい情報の普及とご理解を願っております。

他院で顎変形症や保険適応の矯正治療中の場合、セカンドオピニオン・転医のご相談について ~事前の確認事項~

現在、他院で顎変形症や保険適応での矯正治療中の場合、セカンドオピニオンや転医相談のご相談はお受けできません。

過去に矯正歯科治療のご経験のある方の場合、当院では顎変形症の診断とはなりませんのでご注意ください。原則として過去に歯科矯正治療の既往のある方は、顎変形症として診断することができません。

当院で保険適応での矯正歯科治療を行う場合、通院予約可能時間帯は以下の通り、平日の日中のお時間帯のみとさせて頂いております。 *平日 火曜日〜金曜日の午前10時30分〜午後4時30分まで。* 保険治療に伴う治療や業務の難易度や煩雑性を考慮し、受診可能な時間帯を制限させて頂いております。ご了承ください。

外科的矯正治療のメリット

01
「下あごが出ている」「下あごが大きい」「下あごが長い」「あごがずれている」「あごが曲がっている」「下あごが小さい、あごがない」といった、骨格からくる審美的なお顔立ちの不調和を改善します。
02
骨格の不正からくるお顔のコンプレックスを解消することで、より良い心理的状態が得られるようになります。
03
大きくずれたかみ合わせを治すことで、物がうまく噛めるようになり、発音や滑舌も改善します。
04
通常の歯の移動のみによる矯正治療では、治療できない・改善できない症状があります。その場合は外科手術を併用した矯正治療を行うことで、改善が可能となります。

外科的矯正治療と通常の矯正治療の違い

口元だけではなく、顔立ちや顔のバランスが変化します。

画像:矯正治療のみによる改善

矯正歯科治療のみによる改善

骨格のバランスは変わりません。口もと以外の、輪郭や口角などのお顔立ちの大きな変化は期待できません。

画像:外科的矯正治療による改善

外科的矯正治療による改善

骨格的に前に出た下あごを手術で根本的に改善するため、矯正治療のみの場合と比べ、さらにお顔立ちの改善が期待できます。

外科的矯正治療が必要な症状

骨格性不正咬合(骨格の問題が大きく、矯正治療だけではかみ合わせの改善ができない不正咬合)に対して、外科的矯正治療が適用されます。

画像:下顎前突症

01 重度な下顎前突症

下あごが大きい、長い、など。下あごが前に出ているため、前歯のかみ合わせが反対になり、受け口になっている症状。上の前歯は出っ歯のように傾き、逆に下の前歯が内側に傾いている場合がある。

画像:上顎後退症

02 重度な上顎後退症

上あごが引っ込んでいる、三日月のように顔がへこんでいる、怒った表情に見える、など。下あごの大きさは普通だが、上あごが小さく引っ込んでいるため、反対咬合や受け口になっている症状。上の歯はでこぼこや八重歯が多い。

画像:下顎前突症

03 重度な上顎前突症

重度な出歯。上あごや上の前歯が出ていることが原因の症状。

画像:下顎後退症

04 重度な下顎後退症

重度に下あごが小さい、丸い、あごがない、など。下あごが下がっていることで出っ歯になっている症状。下の歯にでこぼこが多い。上の歯を下げることで、相対的に下あごの存在感が出るような治療方針が望まれる。

画像:ガミースマイル

05 重度なガミースマイル

笑わなくても普段から歯茎が見える。上唇の垂直的な長さに対して、上あごの垂直的な高さが著しく大きく、歯茎が常に見えてしまう症状。上の歯を内側と上方へ移動する、または上あご自体を外科的手術で上方へ持ち上げる、などで改善をはかる。

画像:下顎側方偏位

06 重度な下顎側方偏位

お顔が左右のどちらかに曲がっている症状。口角が曲がっている、咬合平面が曲がっている、上下の歯の正中がずれている、これらの症状と同時に、お口の中の症状として矯正治療だけでは改善できない程度に奥歯が反対になっている、など。下あごだけがずれている場合と、上あごと下あごの両方がずれている場合がある。

外科的矯正治療の流れ

通常の矯正歯科治療に加えて、あごの手術が加わります。ただし、最初から手術を行うわけではなく、手術前に準備のための術前矯正治療を行います。その後、手術をして、仕上げのための術後矯正治療を行います。骨格的に面長な傾向にあり、下のあごの骨の位置が上あごに対して少し下がった状態でした。また、上下のあごに対して並んでいる歯が大きく、でこぼこと上下の前歯の前方への突出が見られました。歯茎の骨ごと前歯が前方に傾斜することで、上下の唇も突出し、口元も閉じにくく、ガミースマイルが見られました。口元の改善を大きく狙うために抜歯して矯正治療を行いました。抜歯をすると決断するならば、歯を抜いて得られたスペースを最大限に有効活用して、口元の改善につなげることが望まれます。治療結果として緊密で美しいかみ合わせだけではなく、横顔の審美性の改善も大きく得られました。歯茎の前方への突出が改善することでガミースマイルも改善が図られました。当院では、目的に対して妥協のない治療効果を得るように努め、高い質の矯正治療を実践します。リスクとして、外科手術や全身麻酔に伴うアレルギーや発作、下顎管の損傷による知覚麻痺の発生、矯正治療に伴う歯根吸収などが考えられた。本症例では幸いにも、リスクに挙げた症状の発生はなく、無事に動的治療を完了した。25歳女性。治療期間3年4ヵ月。動的治療が完了するまでの治療回数:36回。お悩み:受け口、反対咬合、でこぼこ、下顎の突出感。治療内容:上顎両側第一小臼歯、下顎両側第三大臼歯を抜歯を伴った外科的矯正治療。手術内容は上下顎同時移動手術。矯正装置:上下顎唇側からのマルチブラケット装置を用いた矯正治療。費用は、保険適応症例であり、装置料・基本契約施術料・調整料などとして自己負担額の総額として約50万円。診断名:骨格性下顎前突症。

01 初診相談

患者さんの状態を診させていただき、現在の問題点、考えられる治療法についての概要をご説明します。この時点で顎変形症の確定的な診断はできませんのでご注意ください。

02 検査|約60分×2回

1回目の検査では、問診・視診に加えて、レントゲン・歯型・写真など必要な資料をとります。2回目の検査では、あごの運動検査やあごの筋肉(咀嚼筋)の筋電図をとります。

03 診断|約30分〜45分

症状に応じた治療方針を説明します。この段階で、外科手術を併用した矯正治療を行うかご相談します。保護者やご説明をお聞きになりたいご家族の方にも同伴していただきます。顎変形症の症状が認められ、治療に対するご希望が得られる場合にのみ、顎変形症の確定的な診断となります。

04 口腔外科受診

手術を依頼する口腔外科を受診していただきます(当院から紹介状を準備してご紹介します)。当院で提示した治療方針・手術術式などを口腔外科医に確認していただき、詳しい手術の説明も行ってもらいます。また必要に応じてCTなどの検査や親知らずなどの抜歯も行っていただきます。

05 術前矯正治療|月1回30〜60分×2〜3年程度

手術の前に矯正治療により歯を移動させ、上下あごそれぞれの歯並びを整え、手術をした時に上と下の歯が安定して咬む状態にします。術前矯正治療は通常2年以上を要します。術前矯正治療では手術後の良好なかみ合わせを目指すため、手術前の時点ではかみ合わせが悪くなり、咬みにくくなります。矯正の装置の種類は唇側からの矯正装置のみの選択となります。ブラケットはメタルタイプのものとなります。

06 手術日程決定

術前矯正治療の目処が立ってきた段階で、口腔外科を再度受診していただきます。施設によって多少異なりますが、術前検査(心電図、血液検査、尿検査、胸部レントゲンetc.)、自己血貯血(術中の出血に備えて自分の血を採って貯めておくこと)などの処置を行い、数回通院して頂きます。一般的に術前矯正治療が終了した時点で顎矯正手術が行われます。手術は体の成長、顎の伸びが止まる時期以降に可能になるため、個人差がありますが、概ね男性では17〜19歳、女性では16〜18歳以降となります。

07 入院・手術

手術の数日前より入院し、手術を行います。術後の入院期間は早い人で5日程度、通常1〜2週間となります。(術式や患者様個人の回復状態により異なります。また、施設によっても異なります。)当院では、以下の病院が手術を依頼する連携医療機関です。(2017年現在)
・東京医科歯科大学歯学部附属病院 口腔外科外来
・横浜市立大学附属 市民総合医療センター 歯科・口腔外科・矯正歯科
・東京大学 医学部附属病院 歯科・口腔外科
・国立国際医療研究センター 戸山病院 歯科・口腔外科

08 術後矯正|月1回30〜60分×1〜2年程度

手術が終わったあと、手術後の顎の位置の変化に合わせて、上下の歯を緊密に咬み合わせるための術後矯正治療を行います。術後矯正治療の期間は通常1年から1年半程度必要となります。手術で移動させたあごの骨は筋肉などに引っ張られて多少なりとも後戻りを生じます。後戻りを防ぎながらかみ合わせを落ち着かせるために、上下のワイヤーにゴムをかけてもらいます。また、手術で合わせきれなかったかみ合わせの微修正を行うことも術後矯正治療の目的です。

09 保定|2〜6ヵ月に1回20〜30分×2〜3年程度

かみ合わせがしっかりと出来上がり、あごの骨の後戻りも見られなくなったら、矯正装置を外して、取り外しのできる保定装置を使用して術後経過を観察します。装置の使用期間は年齢、治療の経過・内容によっても異なります。

10 (希望により)プレート除去術

手術であごの骨を止める時に用いたチタン製のプレートやスクリューを取る手術を行います。術後1年以降であごの骨の戻りが落ち着いた時期に行います。最初の手術と異なり、骨を削ったりするわけではありませんので、患者様の負担も入院期間も少ないものとなります。この手術は必ずしも全員の方が行うものではなく、除去を希望される方のみ行うものです。

術前矯正治療の必要性

受け口など骨格的な問題がある場合は、体の自然な反応として、できるだけ反対咬合の程度が少なくなるように、上の前歯は外側に傾斜し、下の前歯は内側に傾斜します。これを専門的には歯性補償(デンタルコンペンゼーション)と呼んでいます。

前歯が歯性補償したまま、手術を行っても下あごを後ろに動かす量が少なくなり、顔つきの改善が期待できません。傾斜した前歯を適正な角度に改善することで、下あごを下げる量が増やすことができ、上下のあごのバランスを整えることができます。術前矯正治療が必要なのはそのためです。また、下顎前突症の術前矯正で歯の位置を整えるために小臼歯を抜歯する場合もあります。
矯正治療単独で改善する場合と歯を動かす方向が逆になりますので、治療を開始する前に手術をするか否かを決定する必要があります。

術前矯正の目的は、術後の咬み合わせの安定化(外科手術で骨のずれを治すと、咬む位置が変わりうまく咬めません。咬み合わせが安定していないと、手術で移動した骨がずれる場合があります。そこで手術後の咬み合わせを安定させるため、手術前に歯列矯正を行います。)と、手術設計の明確化(術前矯正が終わったら、上下の歯のずれと顎の移動量を計算し、術後の顔のバランスを考慮して手術計画を立てます。この計画をもとに手術に必要な準備を行います。)をはかることです。

顎変形症の治療では、術前矯正を省いて手術を行うことはできません。
その後、外科手術で見た目や骨格のずれを治した後、術後矯正として1年〜2年前後、骨の安定化を図り、咬み合わせの最終仕上げを行ないます。

手術法の解説

下顎骨切り術

移動の自由度が高く、固定性にも優れた方法です。下顎骨骨切り術専用に作られたプレートで固定するため、顎間固定が不要です。後方だけでなく、前方移動や回転も可能です。

画像:下顎骨切り術 01
1

計画に合わせてデザインをします。

画像:下顎骨切り術 02
2

下顎骨を分割するように切ります。

画像:下顎骨切り術 03
3

下顎骨を移動しプレートで固定します。

上顎骨切り術

移動の自由度が高く、固定性にも優れた方法です。前方だけでなく、上方・後方移動や回転も可能です。

画像:上顎骨切り術 01
1

計画に合わせてデザインをします。

画像:上顎骨切り術 02
2

上顎骨を切ります。

画像:上顎骨切り術 03
3

上顎骨を移動しプレートで固定します。

おとがい骨切り術

長いおとがいや、短いおとがいに適応になる術式です。前方および上方への移動は、皮膚軟部組織の応答もよいのでよく行われます。後方への移動は、軟部組織の反応に乏しいので思ったほどの効果が出ないことがあります。

画像:おとがい骨切り術 01
1

計画に合わせてデザインをします。

画像:おとがい骨切り術 02
2

骨を切ってプレートもしくはワイヤーで固定します。

外科的矯正治療における保険適用の条件

下記条件を満たしている場合に、顎変形症病名の診断のもと、保険での矯正治療と保険での外科手術が可能です。なお矯正治療のみを私費、外科手術のみを保険で行うことは、制度上認められていません。

01
顎変形症の病名など指定症状(病名)があること。
例:顎変形症(下顎前突)など
02
「通常の唇側の矯正装置」で治療すること。マウスピース矯正や裏側矯正で治療する場合は、手術も含めて全て私費治療になります。
03
厚生労働省指定の顎口腔機能診断施設で矯正歯科治療を受け、連携医療機関である指定の口腔外科病院で手術を行うこと。
04
術前矯正(手術前の矯正治療)を行うこと。

保定期間中の注意点

顎変形症の治療では健康保険が適用されます。ただし、すべての矯正歯科で可能というわけではなく、顎口腔機能診断施設(一定の施設基準が必要となります)でのみ保険診療による治療が可能です。しかしながら、多くの場合は顎変形症の確定的な診断を下すことは、検査・診断を行った上で決定されるため、検査までは私費となります。治療方針を本人とよく相談して、外科的矯正治療を適用することが決定した時点で、「顎変形症」という病名をつけて、健康保険が適用されるようになります。

症例によってかなりの幅がありますが、矯正治療の費用は3割負担の場合、自己負担額平均40〜50万円前後です。最初に総額を提示できる自由診療とは違って、通院ごとの処置内容によって毎回の治療費が異なり、総額も異なります。矯正治療の窓口支払額は、毎回5,000円〜10,000円程度のことが多いのですが、精密検査や新たに装置を装着するとき、手術直前の準備を行うときなどは約10,000円〜30,000円前後かかる場合もあります。

入院手術の費用に関しては、術式や入院期間によって異なりますが、3割負担の場合、自己負担額は、下あごのみの手術では40万円前後、上下のあごの手術では70万円前後です。しかし高額療養費制度を利用すれば、所得に応じた一定の自己負担額を超える手術にかかった治療費が返還されます。この制度を利用するためには、以下のような条件を満たす必要があります。

  • 同一病院で支払った1ヶ月の医療費が80,100円を超えること。
  • 国民健康保険または社会保険に加入していること。
  • 本人が申請を行うこと。

取り扱い方法

医療費の自己負担額が高額になる場合、限度額を超えた金額が払い戻される制度です。限度額は年齢や所得によって異なります。同一月内(その月の1日〜31日まで)で、同一の医療機関でかかった医療費が、一定の自己負担限度額(3.5万円〜16万円で年収によって異なる)を超えた分について支給されます。なお入院時の食費負担や差額ベッド代等は含みません。

ご自身が加入されている保険の種類によって問い合わせ申請先が異なります。原則的に、患者さんからの申請で支給されますが、申請書を提出しなくても自動的に支給される制度をとっている保険組合や市町村(国民健康保険)もあるので、詳しくはご確認ください。

外科矯正の入院手術に際しては、当月の治療費が高額になるので、通常は14万円〜40万円程度の還付が見込まれます。詳しくは厚生労働省ホームページ(高額療養費制度を利用される皆様へ)をご参照ください。

例1:外科矯正の入院自己負担額30万円の場合

  • 年収0円〜100万円
    還付額26.5万円 / 差引自己負担額3.5万円
  • 年収100万円〜600万円
    還付額21万円 / 差引自己負担額9万円
  • 年収600万円〜
    還付額14万円 / 差引自己負担額16万円

例2:外科矯正の入院自己負担額50万円の場合

  • 年収0円〜100万円
    還付額46.5万円 / 差引自己負担額3.5万円
  • 年収100万円〜600万円
    還付額41万円 / 差引自己負担額9万円
  • 年収600万円〜
    還付額34万円 / 差引自己負担額16万円

1ヵ月の治療で支払う自己負担額が年収によって決まっているので、入院手術費用が自己負担額を越えていれば、それ以上の費用はかかりません。つまり、患者さんの症状にあわせて、最良の治療方法を選択することが可能です。年収や支給額は目安ですので、実際には個別の世帯や年収によって前後します。

2ヵ月のまたがる入院の場合は、上記より還付額が少なくなる場合があります。入院月以外の口腔外科治療費や矯正治療費は、限度額を越えない場合が多く、その場合は還付の対象になりません。

高額療養費貸付制度

高額療養費給付を受けるには一度3割負担分を支払わなければなません。還付まで数ヶ月程度かかる場合があるので、金銭的な余裕がない場合は、後日還付される金額を担保とし融資を受けることができる制度(高額療養費貸付制度)や、初めから還付額を見越して自己負担額のみの支払いにする制度(委任払制度)などが利用できる場合があります。病院の医事課、加入の保険組合や市町村などで相談すると良いでしょう。

顎矯正手術のリスクは?

顎矯正手術はほとんどの場合、全身状態が健康な状態で行われますので、外科手術の中では比較的リスクの少ない手術と考えられます。しかし、外科手術ですので担当医からリスクについて十分な説明を受け、ご自身がよく理解することが大切です。顎外科手術の術後に問題となるのは、顔(口唇やあごや頬など)に麻痺や知覚鈍麻、腫れが出ることです。麻痺や知覚が鈍くなった状態は徐々に緩和されますが、半年から数年続くこともあります。顔の腫れは、術後1ヵ月が経つ頃にはほとんど解消されてきます。

顎矯正手術後の進行性下顎頭吸収(PCR)

Progressive Condylar Resorption (PCR)

最近、顎矯正手術により手術後の下顎頭吸収(PCR)の発症が注目されています。これは、特に、顎変形症において下顎骨切り術の前方移動(小さい下あごを大きくする手術)において発症頻度が高く、Hoppenreijsらによると6〜20%、日本国内においても、6.25%と報告されています。本来の一般的なPCRとは、進行性下顎頭吸収のことをいいます。進行性下顎頭吸収とは、進行性の下顎頭の形態変化とそれに伴う著明な下顎枝の高さの減少と定義され、その結果として、上顎前突、開咬、顔面非対称といった症状が発現します。

顎変形症に対する顎矯正手術の術後に下顎頭の変形、短縮が発症し、overjetが増加し、overbiteが減少したもの(前歯が出っ歯になってきて、歯と歯が咬み合わなくなる)と定義しています。これは顎矯正手術により下顎を前方へ移動する(下顎が小さい場合に行われる)ことによって関節部において下顎頭の後方が圧迫され、骨吸収が進行するものと考えられています。一方、後方移動(下顎が大きい場合に行われる)においても関節部の下顎頭と下顎窩の位置が正しく適切でなければ、下顎頭は圧迫を受けることとなり、その結果、PCRが発症する可能性があります。

顎関節症と顎変形症

顎変形症を有する患者さんは顎関節症の罹患率が一般より高いと言われています。顎関節症は、現在でも不明な部分が多い病気です。そのため、検査・診断には全身疾患・不定愁訴との鑑別を含めた顎関節症に対する十分な理解をもって、治療および処置は特に慎重に行います。診断の結果、適切と判断される診療科へご紹介し連携をとりながら治療していく場合もあります。また、手術前後の矯正治療期間中だけでなく、外科手術に際しても特別な配慮が必要となります(手術時の骨移動量・手術方法・入院中の管理など)。

顎変形症と歯周病

歯の健康に対する意識の向上(『8020運動』による)や審美的意識の向上、また年齢にかかわらず矯正歯科治療が可能であるとの認識の広まりによって成人矯正の割合は年々増加する傾向にあります。顎変形症の矯正治療においても同様で、顎変形症手術件数は保険適用に伴い急速に増加し治療対象は高齢化の傾向を示すこと、特に中年以降の顎変形症患者に対する手術数は近年増加しています。

しかし一方で、歯に対する意識レベルは確実に向上しているにもかかわらず外科的矯正治療を希望する患者さんの口腔内において、特に中年以降の患者さんでは重度の歯周疾患、多数の補綴物や欠損歯などが多く見受けられます。顎変形症の治療を行うのに際して、徹底した歯周病予防と治療を行う必要があります。

良いかみ合わせを健康的に長く維持していくためには、矯正歯科治療前、治療中、治療後の継続的な口腔ケアが大切です。矯正歯科治療に伴ってケアの方法が若干難しくなり工夫が必要になりますが、ここで身に付けた習慣は将来の健康維持に必ず役にたちます。

よくいただくご質問

入院期間はどれぐらいですか?

術前矯正治療はどれぐらいかかりますか?

手術のリスクは?

普通の歯科矯正治療で治すのと何が違いますか?

外科的矯正治療では保険がききますか?

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