矯正歯科治療とは
かみ合わせの分類と基本用語
かみ合わせを、共通の言葉で捉える
矯正歯科では、かみ合わせの状態を言い表すための用語と分類が、長い時間をかけて整えられてきました。診断書や治療のご説明で出てくる言葉の多くは、この体系にもとづいています。
このページでは、その基本となる見方と用語を整理します。個々の言葉のさらに詳しい解説は、矯正歯科の用語解説に収録しています。ご自身の状態がどれに当たるかは、検査と診断を通じて判断されるものですので、あくまで言葉を知るための手引きとしてお読みください。
三つの方向から見る
かみ合わせは立体的なものですから、専門家は次の三つの方向に分けて捉えます。この整理を知っておくと、以降の用語が理解しやすくなります。
- 前後方向(近遠心的)……上下のあごや歯が、前後にどのような関係にあるか
- 上下方向(垂直的)……上下の歯が、深くかみ込んでいるか、離れているか
- 左右方向(水平的)……歯列の幅や中心が、左右にずれていないか
さらに、これらが歯の傾きによるものなのか、あごの骨の大きさや位置によるものなのかを見分けることが、診断の要になります。同じように見える状態でも、原因が歯にあるか骨格にあるかで、治療の方針は大きく変わるためです。
アングルの分類
不正咬合の分類として最も広く用いられているのが、アメリカの歯科医師 Edward H. Angle が19世紀末に提唱した分類です。上下の第一大臼歯(六歳臼歯)のかみ合う位置関係を基準に、前後方向の関係を三つに分けます。世界の矯正歯科で共通言語として使われ続けています。
I級 Class I
上下の第一大臼歯の前後関係が、標準的とされる位置にあるものです。奥歯の関係が整っていても、前歯に重なりやすき間があることはあり、その場合も前後関係としてはI級に分類されます。
II級 Class II
下の奥歯が、標準より後方の位置でかみ合っているものです。上の前歯が前に出て見えたり、下あごが後ろに引っ込んで見えたりすることがあります。前歯の傾きの違いによって、さらに二つの型に分けられます。上の前歯が前方に傾いているものと、逆に内側に倒れ込んでいるものです。
III級 Class III
下の奥歯が、標準より前方の位置でかみ合っているものです。下の前歯が上の前歯より前に出る、いわゆる受け口の状態を伴うことがあります。歯の傾きによるものと、下あごの大きさや位置によるものとがあり、後者の場合は成長の経過を追って判断していきます。
前後の関係を表す用語
- 上顎前突(じょうがくぜんとつ)……上の前歯や上あごが前方に出ている状態。いわゆる「出っ歯」と呼ばれることがあります。
- 下顎前突(かがくぜんとつ)・反対咬合……下の前歯が上の前歯より前に出ている状態。「受け口」と呼ばれることがあります。
- 上下顎前突……上下の前歯がともに前に出て、口元が突き出して見える状態。
- 切端咬合(せったんこうごう)……上下の前歯の先端どうしが、ちょうど当たる状態。
- オーバージェット……上下の前歯の水平方向の重なりの量。前後関係を数値で表すときに使います。
上下の関係を表す用語
- 過蓋咬合(かがいこうごう)……上の前歯が下の前歯を深く覆い、下の前歯がほとんど見えない状態。
- 開咬(かいこう)……奥歯でかんだときに、上下の前歯が接触せず開いている状態。前歯でかみ切りにくくなることがあります。
- オーバーバイト……上下の前歯の垂直方向の重なりの量。深さを数値で表すときに使います。
- 被蓋(ひがい)……上下の歯の覆いかぶさり方の総称。「被蓋が深い/浅い」のように用います。
左右・並びを表す用語
- 叢生(そうせい)……あごの大きさに対して歯が並びきらず、重なったりねじれたりしている状態。「でこぼこ」「乱ぐい歯」と呼ばれることもあり、八重歯もこれに含まれます。
- 空隙歯列(くうげきしれつ)……歯と歯のあいだにすき間がある状態。前歯の中央のすき間は正中離開ともいいます。
- 交叉咬合(こうさこうごう)……上下の歯列の幅が合わず、部分的に上下が逆にかみ合っている状態。
- 鋏状咬合(きょうじょうこうごう)……奥歯が上下ですれ違い、かみ合っていない状態。
- 正中(せいちゅう)……上下それぞれの前歯の中央の線。お顔の中心との関係とあわせて確認します。
- 歯列弓(しれつきゅう)……歯が並んで描くアーチの形。幅や形の左右差も診査の対象です。
分類はゴールではありません
ここまでの分類や用語は、状態を正確に共有するための言葉であって、治療方針そのものではありません。実際には、複数の特徴が重なっていることがほとんどですし、同じ分類でも、骨格・歯の大きさ・お顔立ち・年齢によって、目指すゴールも進め方も変わります。
診断とは、これらの言葉を組み合わせて現状を言い表すことではなく、その方にとってどこを目標とし、どの順序で進めるかを定めることです。当院がどのような考え方で治療目標を設定しているかは、治療方針のページでご説明しています。
このページの監修
尾崎 周作(歯学博士/東京科学大学大学院修了)
- 尾崎矯正歯科クリニック 院長
- 東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)咬合機能矯正学分野 臨床教授
- 日本歯科専門医機構認定 矯正歯科専門医
最終更新:2026年8月3日
当ページの内容は一般的な事柄についてのご説明です。診断や治療方針は、ご来院のうえ、口腔内を拝見してから承ります。
