矯正歯科治療とは

横顔タイプ別の特徴

横顔タイプ別の特徴

横顔タイプ別の特徴

人は骨格の違いによって、噛む力の強い方と弱い方がおり、その影響で歯並びも変わります。全ての人のかみ合わせは、この図の9つの中のいずれかに分類されます。まずは、その症状の原因や特徴をよく理解して、適した治療方針を立てることが大切です。

この9つの分類は、見た目の印象を仕分けるためのものではありません。歯並びの症状がなぜ生じているのか、その根もとにある骨格の傾向を捉えるための地図です。縦の軸は、お顔の長さ(骨格の垂直的な傾向)です。面長(ロングフェイス)の方は噛む力が弱めで、かみ合わせが浅く、開咬やガミースマイルへ傾きやすく、逆に短いお顔(ショートフェイス)の方は噛む力が強めで、かみ合わせが深く、過蓋咬合や歯のすり減りへ傾きやすい傾向があります。横の軸は、上下のあごの前後の関係です。大切なのは、この傾向が、同じ症状でも治療の設計を左右するという点です。たとえば同じでこぼこでも、面長で噛む力が弱い方と、短いお顔で噛む力が強い方とでは、歯を並べたあとの安定の課題も、噛む力への備えも変わります。

ご自身がどのタイプに近いか、鏡である程度の見当をつけることはできます。お顔が縦に長い印象か短い印象か。軽く咬んだとき、下の前歯が上の前歯に深く隠れるか(深い=短いお顔の傾向)、あまり重ならないか(浅い=長いお顔の傾向)。横から見て、口元が前に出ているか、あご先が出ているか。ただし、見た目の印象と実際の骨格の計測は、しばしば食い違います。面長に見えるのに骨格は標準だった、出っ歯に見えたが原因は下あごの後退だった、ということが珍しくありません。そこで矯正歯科では、頭部エックス線規格写真(セファログラム)という規格化されたレントゲンを撮影し、あごの骨格の前後・上下の関係や歯の傾きを数値で計測して、タイプを客観的に確かめます(→ 治療の流れ・期間)。

タイプA〜C|長いお顔(かみ合わせが浅い傾向)

比較的噛む力が弱く、あごが細く、開咬やガミースマイルといった症状になりやすい。

TYPE A

面長(ロングフェイス)で、噛む力が弱く、垂直的には開咬になりやすいタイプ。前後的には出っ歯で、成長の過程で下あごの後下方への成長がみられる。異常嚥下癖などの舌の悪習癖がみられることが多い。

TYPE B

面長(ロングフェイス)で、噛む力が弱く、垂直的には開咬になりやすいタイプ。前後的には問題ない。異常嚥下癖などの舌の悪習癖がみられることが多い。

TYPE C

面長(ロングフェイス)で、噛む力が弱く、垂直的には開咬になりやすいタイプ。前後的には受け口で、成長の過程で下あごの過成長がみられる。低位舌や異常嚥下癖などの悪習癖がみられることが多い。

このタイプの方に共通する治療上のテーマは、二つあります。一つは、垂直的なコントロールです。面長の骨格は、奥歯が伸び出しやすく、前歯が届きにくくなる(開咬へ向かう)傾向を持ちます。ですから治療では、前歯を無理に伸ばして閉じるのではなく、奥歯の高さを抑える、骨格的な傾向に配慮するという、垂直方向の設計が要になります。近年は、歯科矯正用アンカースクリューを支えとして奥歯を沈める選択肢も加わりました(→ 歯科矯正用アンカースクリュー)。もう一つは、舌の癖への対応です。このタイプでは異常嚥下癖や低位舌といった舌の悪習癖がよく見られます。舌が前歯を押す力は治療後の後戻りの大きな要因になるため、装置による治療と、お口の筋肉のトレーニングを両輪で進めることが、長期の安定につながります(→ MFT|歯並びに影響する癖の改善)。

タイプD〜F|標準的長さのお顔

TYPE D

垂直的なお顔の長さは標準的だが、前後的には出っ歯。噛む力は標準的で、垂直的な前歯の重なり(深さ)も標準的なことが多い。

TYPE E

垂直的なお顔の長さは標準的で、前後的にも骨格的には問題がない。でこぼこや口元の突出などの問題が目立つことがある。噛む力は標準的で、垂直的な前歯の重なり(深さ)も標準的なことが多い。

TYPE F

垂直的なお顔の長さは標準的だが、前後的には受け口。噛む力は標準的で、垂直的な前歯の重なり(深さ)も標準的なことが多い。

このタイプの方は、骨格の垂直的な長さが標準的で、噛む力も前歯の重なりも標準的なことが多い、いわば骨格という土台の条件に恵まれたグループです。だからこそ、治療の成否は診断と歯の移動の設計に、より大きく左右されます。たとえばタイプEは、骨格に大きな問題がないのに、でこぼこや口元の突出が目立つことがあります。これはあごの大きさに対して歯が大きいというスペースの不調和が主な原因で、抜歯と非抜歯の判断が治療の質を分ける、診断の要となる場面です(→ 多くの歯を残すための配慮)。骨格が標準的なぶん、歯の移動でかみ合わせを補正できる範囲が比較的広いことも、このタイプの特徴です。

タイプG〜I|短いお顔(かみ合わせが深い傾向)

比較的噛む力が強く、エラが張っていて、過蓋咬合(深いかみ合わせ)や、笑ったときに歯が見えにくいといった症状になりやすい。

TYPE G

垂直的には短頭系(ショートフェイス)で、噛む力が強く、過蓋咬合を呈しやすい。前後的には出っ歯で、下の歯が見えづらく、くいしばりや歯ぎしり、歯の擦り減りなどが起こりやすい。

TYPE H

垂直的には短頭系(ショートフェイス)で、噛む力が強く、過蓋咬合を呈しやすい。前後的には標準的だが、下の歯が見えづらく、くいしばりや歯ぎしり、歯の擦り減りなどが起こりやすい。咬合性外傷による前歯の短根などが生じる場合もある。

TYPE I

垂直的には短頭系(ショートフェイス)で、噛む力が強く、過蓋咬合を呈しやすい。前後的には受け口で、上の歯が見えづらく、くいしばりや歯ぎしり、歯の擦り減りなどが起こりやすい。

このタイプの方に共通する治療上のテーマは、強い噛む力とどう付き合うかです。短いお顔の骨格は、噛む力が強く、かみ合わせが深くなりやすい(過蓋咬合)傾向を持ちます。強い力は正しく受け止められれば財産ですが、深いかみ合わせをそのままにすると、下の前歯が上の前歯の裏の歯ぐきを傷める、前歯の根に負担がかかる(歯根の吸収)、歯がすり減る、といった負担が静かに蓄積します。ですから治療では、深すぎるかみ合わせを適切な深さへ導く垂直的なコントロールと、強い力に長く耐えられる緊密で安定したかみ合わせの構築が目標になります。この力に耐える設計という観点から、当院はできるだけ多くの歯を残すことを重視します(→ 多くの歯を残すための配慮理想的な治療結果とは)。強い食いしばりや歯ぎしりが背景にある場合は、その負担への対応もあわせて考えます(→ 顎関節症治療)。

最後に、この9分類の使い方について、大切なことをお伝えします。人のかみ合わせは9つのタイプにおおまかに分類できますが、実際には、隣り合うタイプの中間にある方や、複数の要素を併せ持つ方が数多くいらっしゃいます。この地図は、その方を一つの枠に押し込めるためのものではなく、治療の方向性を考えるための出発点です。そして、どのタイプであっても、それぞれに応じた治療の道があります。大切なのは、ご自身のタイプと症状を正しく捉え、その方にとって最善の方針を立てることです。ご自身がどのタイプに当てはまり、どのような治療が考えられるのかは、初診相談でご説明します(→ 初診相談)。

このページの監修

尾崎 周作(歯学博士/東京科学大学大学院修了)

  • 尾崎矯正歯科クリニック 院長
  • 東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)咬合機能矯正学分野 臨床教授
  • 日本歯科専門医機構認定 矯正歯科専門医

最終更新:2026年8月3日

当ページの内容は一般的な事柄についてのご説明です。診断や治療方針は、ご来院のうえ、口腔内を拝見してから承ります。

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