矯正治療法

その他の先天性疾患の治療

健康保険適用の矯正歯科治療

健康保険適用の矯正歯科治療

厚生労働大臣の定める先天性疾患に起因したかみ合わせの異常については、その治療に健康保険が適用されます。該当するかどうかは、診察と検査にもとづく診断の結果として判断されるものです。

国の定める「自立支援医療機関(育成医療・更生医療)」ならびに「顎口腔機能診断施設」の指定を受けている医療機関リストで矯正歯科治療を受ける場合にのみ、健康保険が適用されます。当院はこの基準を満たした指定医療機関です。

保険適用となる先天性疾患

厚生労働大臣が定める、矯正歯科治療に健康保険が適用される先天性疾患は、以下のとおりです。疾患名をお選びいただくと、お口まわりと全身に考えられる症状、合併症、一般的な治療の考え方をご覧いただけます。

ここに記載した内容は、一般的な医学的知見にもとづく概説です。症状の現れ方や程度には大きな個人差があり、すべての方に当てはまるものではありません。また、該当する疾患をお持ちであることが、そのまま矯正歯科治療の保険適用を意味するものでもありません。適用となるかどうかは、かみ合わせの状態を診察・検査したうえでの診断の結果として判断されます。

対象疾患の一覧(全69疾患)

唇顎口蓋裂

お口まわりに考えられる症状

上唇・歯ぐき・口蓋(上あごの天井)の一部または全部が生まれつき裂けた状態です。裂に接する部位の歯の欠如・過剰・形の異常、上あごの劣成長による反対咬合、歯列の狭窄がみられます。

全身に考えられる症状

口と鼻がつながることで、哺乳がうまくいかない、鼻へ息が漏れて発音が不明瞭になる、中耳炎を繰り返すといったことが生じます。

考えられる合併症

滲出性中耳炎と難聴、言語発達の遅れ、上顎骨の成長障害、う蝕・歯周疾患のリスク上昇。

一般的な治療(お口まわり)

乳児期のホッツ床、混合歯列期からの上顎の成長促進や歯列の拡大、顎裂部への骨移植(顎裂部骨移植)に合わせた矯正、永久歯列期の本格矯正、必要に応じて外科的矯正治療。

一般的な治療(全身)

口唇形成術(生後3か月ごろ)、口蓋形成術(1歳〜1歳半ごろ)、言語治療、耳鼻咽喉科での中耳の管理。

補足

出生直後から成人まで、形成外科・口腔外科・耳鼻咽喉科・言語聴覚士・小児科・矯正歯科がチームで関わる、長期の医療連携が必要な疾患です。

ゴールデンハー症候群(鰓弓異常症を含む)

お口まわりに考えられる症状

顔面の左右差、下あごの片側の低形成、耳の変形、歯の萌出遅延や欠如、開咬・交叉咬合。

全身に考えられる症状

眼球上皮類皮腫、耳介の低形成や外耳道閉鎖、頸椎の異常、心・腎の奇形を伴うことがあります。

考えられる合併症

伝音難聴、視力障害、頸椎の不安定性。

一般的な治療(お口まわり)

成長期の顎誘導、下顎枝の延長術(仮骨延伸)に伴う矯正、永久歯列期の外科的矯正治療。

一般的な治療(全身)

耳の形成術、聴覚の管理、眼科的処置、必要に応じ心臓・腎臓の管理。

補足

第一・第二鰓弓の発生異常によるもので、左右差の程度は個人差が大きく、成長とともに差が目立つことがあります。

鎖骨頭蓋骨異形成

お口まわりに考えられる症状

永久歯の萌出遅延・埋伏、多数の過剰歯、乳歯の晩期残存、上あごの劣成長による反対咬合。

全身に考えられる症状

鎖骨の低形成または欠損(肩を前で合わせられる)、大泉門の閉鎖遅延、低身長。

考えられる合併症

多数歯の埋伏による咬合の未確立、副鼻腔炎、まれに骨折しやすさ。

一般的な治療(お口まわり)

過剰歯の抜去、埋伏歯の開窓・牽引を長期にわたり計画的に行う矯正治療。

一般的な治療(全身)

整形外科的な経過観察。骨の脆弱性への配慮。

補足

歯の問題が最も長期にわたる疾患のひとつで、開窓牽引を繰り返す治療計画が必要になります。

トリーチャ・コリンズ症候群

お口まわりに考えられる症状

下あごの著しい低形成による重度の下顎後退、高口蓋、開咬、歯の萌出異常。口蓋裂を伴うことがあります。

全身に考えられる症状

頬骨の低形成、眼瞼裂の外下方傾斜、耳介の変形、外耳道閉鎖。

考えられる合併症

新生児期の気道閉塞、伝音難聴、摂食嚥下の困難。

一般的な治療(お口まわり)

気道の確保に配慮した矯正、下顎枝延長術に伴う矯正、永久歯列期の外科的矯正治療。

一般的な治療(全身)

気道確保(重症例では気管切開)、耳の形成術と聴覚管理、頬骨・下顎の形成術。

補足

常染色体顕性遺伝の形式をとることがあり、知的発達は通常保たれます。

ピエール・ロバン症候群

お口まわりに考えられる症状

著しい小下顎症、舌根沈下、高頻度に口蓋裂を伴います。将来的に下顎後退による上顎前突様の咬合となります。

全身に考えられる症状

新生児期からの呼吸障害と哺乳障害。

考えられる合併症

上気道閉塞、低酸素、成長障害、滲出性中耳炎。

一般的な治療(お口まわり)

口蓋裂に準じた矯正管理、成長期の下顎誘導、必要に応じ外科的矯正治療。

一般的な治療(全身)

腹臥位管理、経鼻エアウェイ、重症例では下顎骨延長術や気管切開、口蓋形成術。

補足

下あごは成長とともにある程度追いつくことが多いものの、個人差があります。

ダウン症候群

お口まわりに考えられる症状

巨舌傾向、上あごの劣成長による反対咬合、歯の萌出遅延、先天性欠如歯、矮小歯、歯周疾患の進行が早い傾向。

全身に考えられる症状

筋緊張低下、知的発達症、低身長、特徴的な顔貌。

考えられる合併症

先天性心疾患、環軸椎不安定症、甲状腺機能異常、白血病リスクの上昇、閉塞性睡眠時無呼吸。

一般的な治療(お口まわり)

歯周管理を最優先とした口腔衛生指導、ご本人の協力度に応じた無理のない矯正計画。

一般的な治療(全身)

心疾患の管理、甲状腺・聴力・視力の定期評価、療育。

補足

環軸椎不安定症がある場合、頸部を反らせる姿勢に注意が必要です。全身状態の把握が治療計画の前提になります。

ラッセル・シルバー症候群

お口まわりに考えられる症状

小下顎、歯列の狭窄、叢生、歯の萌出遅延。口角が下がった三角形の顔貌。

全身に考えられる症状

子宮内発育不全、出生後の成長障害、体幹や四肢の左右非対称、低血糖。

考えられる合併症

低身長、摂食障害。

一般的な治療(お口まわり)

成長の程度を見ながらの矯正。低年齢では負担の少ない管理を優先します。

一般的な治療(全身)

成長ホルモン治療、栄養管理、低血糖への対応。

補足

低身長の治療が並行することが多く、全身管理を担当する小児科との連携が重要です。

ターナー症候群

お口まわりに考えられる症状

上あごの狭窄と高口蓋、下顎後退、叢生、歯根の短縮傾向。

全身に考えられる症状

低身長、性腺機能不全、翼状頸、外反肘。

考えられる合併症

心血管系の異常(大動脈縮窄など)、腎奇形、甲状腺機能低下、難聴。

一般的な治療(お口まわり)

歯根短縮に配慮した弱い矯正力での治療。

一般的な治療(全身)

成長ホルモン治療、女性ホルモン補充療法、心血管系の定期評価。

補足

歯根が短い傾向があるため、矯正力の大きさと期間に特別な配慮が必要です。

ベックウィズ・ウイーデマン症候群

お口まわりに考えられる症状

巨舌による開咬・下顎前突、歯列弓の拡大、舌の突出による発音障害。

全身に考えられる症状

出生時過大、臍帯ヘルニア、片側肥大、新生児低血糖。

考えられる合併症

小児期の腫瘍(ウィルムス腫瘍・肝芽腫)リスクの上昇。

一般的な治療(お口まわり)

舌縮小術の前後に合わせた矯正、開咬の管理、必要に応じ外科的矯正治療。

一般的な治療(全身)

新生児期の低血糖管理、臍帯ヘルニアの修復、腫瘍の定期スクリーニング。

補足

巨舌の程度により、舌の手術の要否と時期が咬合の見通しを大きく左右します。

顔面半側萎縮症

お口まわりに考えられる症状

片側の顔面組織の萎縮に伴う顔面非対称、患側の歯の萌出遅延・歯根形成不全、咬合平面の傾斜。

全身に考えられる症状

片側の皮膚・皮下組織・筋・骨の進行性萎縮。前額部に線状の皮膚硬化を伴うことがあります。

考えられる合併症

神経症状(てんかん・三叉神経痛)、眼症状。

一般的な治療(お口まわり)

進行が止まってからの矯正・外科的矯正治療が原則。進行期は経過観察を優先します。

一般的な治療(全身)

皮膚科・膠原病内科での評価、進行停止後の軟組織移植など形成外科的再建。

補足

ロンベルグ症候群とも呼ばれます。進行性である点が、他の非対称と大きく異なります。

先天性ミオパチー

お口まわりに考えられる症状

口輪筋・咀嚼筋の筋力低下による口唇閉鎖不全、高口蓋、開咬、下顎後退。

全身に考えられる症状

出生時からの筋緊張低下と筋力低下、運動発達の遅れ。

考えられる合併症

呼吸機能低下、側弯、摂食嚥下障害。

一般的な治療(お口まわり)

口唇閉鎖不全を前提とした保定計画。筋力に依存する装置は慎重に選択します。

一般的な治療(全身)

リハビリテーション、呼吸管理、栄養管理。

補足

筋力が咬合の維持に関わるため、治療後の後戻りへの配慮が特に重要です。

筋ジストロフィー

お口まわりに考えられる症状

咀嚼筋の筋力低下と進行性の萎縮による開咬、巨舌傾向、歯列弓の拡大、口唇閉鎖不全。

全身に考えられる症状

進行性の筋力低下、歩行障害、心筋障害。

考えられる合併症

呼吸不全、心不全、嚥下障害、側弯。

一般的な治療(お口まわり)

進行度に応じた負担の少ない治療。口腔衛生の維持を最優先とします。

一般的な治療(全身)

ステロイド治療、呼吸・心機能の管理、リハビリテーション。

補足

全身状態の変化を前提に、治療の目標と期間を慎重に設定する必要があります。

脊髄性筋委縮症

お口まわりに考えられる症状

開咬、下顎後退、開口障害、舌の線維束攣縮。

全身に考えられる症状

脊髄前角細胞の変性による筋力低下と筋萎縮。

考えられる合併症

呼吸不全、摂食嚥下障害、側弯。

一般的な治療(お口まわり)

開口量に応じた治療、口腔衛生管理の徹底。

一般的な治療(全身)

疾患修飾薬による治療、呼吸理学療法、栄養管理。

補足

近年は治療薬の進歩により経過が変わりつつあり、長期の口腔管理の重要性が増しています。

顔面半側肥大症

お口まわりに考えられる症状

片側の上下顎骨・歯の大きさの増大、患側の歯の早期萌出、咬合平面の傾斜、正中のずれ。

全身に考えられる症状

顔面または身体片側の過成長。

考えられる合併症

小児期の腫瘍リスク(片側肥大に伴う)、下肢長差。

一般的な治療(お口まわり)

成長終了を待っての矯正・外科的矯正治療が原則です。

一般的な治療(全身)

整形外科的な脚長差の管理、腫瘍のスクリーニング。

補足

萎縮症とは逆に、患側が大きくなる点が特徴です。

エリス・ヴァンクレベルド症候群

お口まわりに考えられる症状

多数の先天性欠如歯、円錐歯、上唇小帯の異常(唇と歯ぐきの癒着)、萌出遅延。

全身に考えられる症状

四肢短縮型低身長、多指症、爪と毛髪の形成不全。

考えられる合併症

先天性心疾患(心房中隔欠損など)。

一般的な治療(お口まわり)

欠如歯を前提とした咬合の再構成、補綴(かぶせ物・入れ歯)を見据えた矯正。

一般的な治療(全身)

心疾患の管理、整形外科的治療。

補足

歯の数と形の異常が顕著で、矯正と補綴の連携が前提となります。

軟骨形成不全症

お口まわりに考えられる症状

上あごの劣成長による反対咬合、鼻腔の狭窄、歯列の叢生、下顎前突様の顔貌。

全身に考えられる症状

四肢短縮型の低身長、大きな頭囲、鼻根部の陥凹。

考えられる合併症

大後頭孔狭窄、閉塞性睡眠時無呼吸、水頭症、脊柱管狭窄。

一般的な治療(お口まわり)

上顎の成長促進、永久歯列期の外科的矯正治療。気道の状態に配慮します。

一般的な治療(全身)

成長ホルモン治療、脚延長術、脊柱管狭窄への対応。

補足

上あごの成長不足が骨格性の反対咬合につながるため、成長期の管理が重要です。

外胚葉異形成症

お口まわりに考えられる症状

多数の先天性欠如歯(無歯症に近い場合もあります)、円錐歯、歯槽骨の発育不良、唾液分泌の低下。

全身に考えられる症状

汗腺の低形成による発汗低下と高体温、毛髪と爪の形成不全。

考えられる合併症

高体温によるけいれん、皮膚の乾燥。

一般的な治療(お口まわり)

小児期からの義歯による咬合と発音の確保、成長に応じた作り替え、成人期のインプラントを含む補綴と矯正の連携。

一般的な治療(全身)

体温管理(暑熱環境の回避)、皮膚のケア。

補足

歯がほとんど生えないこともあり、幼少期から補綴的な支援が必要になる代表的な疾患です。

神経線維腫症

お口まわりに考えられる症状

顎骨内の神経線維腫による顔面非対称、歯の位置異常や移動、下顎管の拡大。

全身に考えられる症状

カフェオレ斑、皮膚の神経線維腫、骨の異形成。

考えられる合併症

視神経膠腫、側弯、学習障害、まれに悪性化。

一般的な治療(お口まわり)

腫瘍の状態を確認したうえでの矯正。骨の状態により治療計画が変わります。

一般的な治療(全身)

腫瘍の経過観察と必要に応じた切除、整形外科的管理。

補足

顎顔面領域に病変がある場合、矯正治療の可否と範囲は個別の判断となります。

基底細胞母斑症候群

お口まわりに考えられる症状

多発性の顎骨嚢胞(角化嚢胞性歯原性腫瘍)、歯の萌出障害と転位、口蓋裂を伴うことがあります。

全身に考えられる症状

多発性基底細胞癌、手掌・足底の小陥凹、大脳鎌の石灰化、前頭部の突出。

考えられる合併症

嚢胞の再発、病的骨折、皮膚癌。

一般的な治療(お口まわり)

嚢胞の摘出後の骨の回復を待っての矯正。埋伏歯の牽引を含みます。

一般的な治療(全身)

皮膚科での定期的な癌のチェック、嚢胞の外科的処置。

補足

顎骨嚢胞が繰り返し生じるため、矯正治療中も画像による経過観察が欠かせません。ゴーリン症候群とも呼ばれます。

ヌーナン症候群

お口まわりに考えられる症状

高口蓋、叢生、下顎後退、咬合異常。

全身に考えられる症状

低身長、翼状頸、眼間開離、胸郭変形。

考えられる合併症

肺動脈狭窄・肥大型心筋症などの心疾患、出血傾向、停留精巣。

一般的な治療(お口まわり)

出血傾向を考慮した抜歯計画。心疾患がある場合は感染性心内膜炎の予防に配慮します。

一般的な治療(全身)

心疾患の管理、成長ホルモン治療。

補足

外見上ターナー症候群に似ますが、男女ともに発症し染色体は正常です。

マルファン症候群

お口まわりに考えられる症状

高口蓋、著しい叢生、下顎後退または前突、顎関節の弛緩による脱臼傾向。

全身に考えられる症状

高身長、細く長い四肢と指、水晶体亜脱臼、関節の過可動性。

考えられる合併症

大動脈瘤・大動脈解離、僧帽弁逸脱、気胸、網膜剥離。

一般的な治療(お口まわり)

顎関節への負担に配慮した治療。長時間の開口を避けます。

一般的な治療(全身)

大動脈径の定期的な評価と必要に応じた手術、β遮断薬、眼科的管理。

補足

大動脈の合併症が生命に関わるため、循環器科の管理状況の把握が治療の前提となります。

プラダー・ウィリー症候群

お口まわりに考えられる症状

唾液の粘稠化によるう蝕の多発、エナメル質形成不全、叢生、開咬。歯ぎしりや反芻がみられることがあります。

全身に考えられる症状

乳児期の筋緊張低下と哺乳障害、幼児期以降の過食と肥満、低身長、知的発達症。

考えられる合併症

2型糖尿病、閉塞性睡眠時無呼吸、側弯、行動上の課題。

一般的な治療(お口まわり)

う蝕予防を最優先とした管理。装置の使用はご本人の理解度に応じて計画します。

一般的な治療(全身)

成長ホルモン治療、厳格な食事管理、行動面の支援。

補足

口腔衛生の維持が難しい場合が多く、矯正治療の前提として予防管理が重要になります。

顔面裂(横顔裂、斜顔裂及び正中顔裂を含む)

お口まわりに考えられる症状

裂の走行に沿った歯・歯槽骨の欠損、開口の拡大(横顔裂)、著しい顎の変形と咬合異常。

全身に考えられる症状

眼や鼻の位置異常、軟組織の欠損。

考えられる合併症

摂食・発音の障害、審美的な課題。

一般的な治療(お口まわり)

裂に対する骨移植を含む再建の各段階に合わせた矯正、永久歯列期の外科的矯正治療。

一般的な治療(全身)

形成外科による段階的再建手術。

補足

唇顎口蓋裂よりまれで、裂の位置と程度により治療計画は大きく異なります。

大理石骨病

お口まわりに考えられる症状

歯の萌出障害と埋伏、歯根形成不全、抜歯後の骨髄炎(顎骨壊死)のリスク。

全身に考えられる症状

骨密度の異常な上昇と骨のもろさ、貧血、肝脾腫、脳神経の圧迫。

考えられる合併症

病的骨折、視神経・聴神経の圧迫による障害、顎骨骨髄炎。

一般的な治療(お口まわり)

抜歯を極力避ける保存的な方針。歯の移動も骨の状態により制限されます。

一般的な治療(全身)

重症型では造血幹細胞移植、輸血、感染管理。

補足

顎骨骨髄炎のリスクが高く、外科処置を伴う矯正治療は慎重な判断が必要です。

色素失調症

お口まわりに考えられる症状

多数の先天性欠如歯、円錐歯、萌出遅延、口蓋の異常。

全身に考えられる症状

新生児期の水疱に始まり色素沈着へ移行する皮膚病変、脱毛、爪の変形。

考えられる合併症

網膜血管の異常による視力障害、てんかん、知的発達症。

一般的な治療(お口まわり)

欠如歯と歯の形の異常に対する補綴を見据えた矯正。

一般的な治療(全身)

皮膚のケア、眼科的な定期検査、神経学的管理。

補足

X連鎖顕性遺伝で、ほとんどが女性に発症します。歯の異常は高頻度にみられます。

口腔・顔面・指趾症候群

お口まわりに考えられる症状

多発する口腔内の小帯(線維性の帯)、舌の分葉、口蓋裂、多数の欠如歯や過剰歯、著しい叢生。

全身に考えられる症状

顔面正中部の異常、多指症・合指症・短指症。

考えられる合併症

多発性嚢胞腎、中枢神経系の異常、知的発達症。

一般的な治療(お口まわり)

小帯の切除、欠如歯・過剰歯を踏まえた咬合の再構成。

一般的な治療(全身)

腎機能の定期評価、整形外科的治療。

補足

口腔内所見が診断の重要な手がかりとなる疾患です。

メビウス症候群

お口まわりに考えられる症状

顔面神経麻痺による表情の乏しさ、口唇閉鎖不全、小下顎、開咬、う蝕の多発。

全身に考えられる症状

顔面神経と外転神経の麻痺による表情筋の動きの欠如と眼球運動障害。

考えられる合併症

哺乳障害、構音障害、角膜の乾燥と損傷。

一般的な治療(お口まわり)

口唇閉鎖不全を前提とした保定計画、う蝕予防の徹底。

一般的な治療(全身)

眼の保護、言語療法、笑顔再建術(筋移植)が行われることがあります。

補足

口唇が閉じにくいことが咬合と口腔衛生の両面に影響します。

歌舞伎症候群

お口まわりに考えられる症状

口蓋裂または高口蓋、先天性欠如歯、円錐歯、上下顎の劣成長による咬合異常。

全身に考えられる症状

特徴的な顔貌(下眼瞼外側の外反)、低身長、知的発達症、筋緊張低下。

考えられる合併症

先天性心疾患、反復性中耳炎、腎尿路奇形、免疫不全。

一般的な治療(お口まわり)

欠如歯と骨格的な問題を踏まえた長期計画。感染への配慮を要します。

一般的な治療(全身)

心疾患・腎奇形の管理、聴力管理、療育。

補足

旧称はカブキメーキャップ症候群です。

クリッペル・トレノネー・ウェーバー症候群

お口まわりに考えられる症状

顎顔面領域に病変が及ぶ場合、片側性の歯肉の腫脹、歯の早期萌出、顎骨の過成長、咬合の非対称。

全身に考えられる症状

血管腫(ポートワイン母斑)、静脈瘤、患肢の肥大。

考えられる合併症

出血、血栓症、心不全。

一般的な治療(お口まわり)

出血のリスクを厳重に評価したうえでの治療。抜歯には特別な準備が必要です。

一般的な治療(全身)

血管内治療、圧迫療法、整形外科的管理。

補足

口腔内に血管病変がある場合、通常の歯科処置でも大量出血の危険があり、事前の画像評価が必須です。

ウイリアムズ症候群

お口まわりに考えられる症状

エナメル質の形成不全、矮小歯、先天性欠如歯、叢生、下顎後退。

全身に考えられる症状

特徴的な顔貌、知的発達症(言語面は比較的良好)、社交的な性格。

考えられる合併症

大動脈弁上狭窄などの心血管疾患、高カルシウム血症、腎の異常。

一般的な治療(お口まわり)

心疾患を踏まえた感染予防、う蝕予防を重視した管理。

一般的な治療(全身)

心血管系の定期評価と必要に応じた手術、カルシウム値の管理。

補足

循環器の合併症があるため、観血的処置の前に主治医との連携が必要です。

ビンダー症候群

お口まわりに考えられる症状

上あごの著しい劣成長による反対咬合、鼻中隔と前鼻棘の低形成、上顎前歯部の後退。

全身に考えられる症状

鼻の付け根が平坦で鼻先が上を向く特徴的な顔貌。

考えられる合併症

鼻閉、口呼吸。

一般的な治療(お口まわり)

成長期の上顎前方牽引、永久歯列期には上顎骨の前方移動を伴う外科的矯正治療。

一般的な治療(全身)

鼻の形成術(軟骨移植など)。

補足

上顎中央部の低形成が本態で、外科的矯正治療の適応となることが多い疾患です。

スティックラー症候群

お口まわりに考えられる症状

口蓋裂または高口蓋、小下顎、下顎後退による著しい上顎前突様の咬合。ピエール・ロバン連鎖を伴うことがあります。

全身に考えられる症状

強度近視、難聴、関節の過可動性と早発性の関節症。

考えられる合併症

網膜剥離による失明、進行性の難聴、変形性関節症。

一般的な治療(お口まわり)

口蓋裂に準じた管理、成長期の下顎誘導、必要に応じ外科的矯正治療。

一般的な治療(全身)

網膜剥離の予防的処置と定期的な眼科受診、聴力管理、関節の保護。

補足

網膜剥離のリスクが高く、頭部に強い力や衝撃が加わる処置は避ける配慮が必要です。

小舌症

お口まわりに考えられる症状

舌の著しい低形成による歯列弓の狭窄、上下顎の劣成長、構音障害、嚥下障害。

全身に考えられる症状

舌の形成不全そのもの。他の奇形を伴うことがあります。

考えられる合併症

摂食嚥下障害、発音障害。

一般的な治療(お口まわり)

狭窄した歯列の拡大、舌の機能に応じた咬合の再構成。

一般的な治療(全身)

摂食嚥下リハビリテーション、言語治療。

補足

舌は歯列の内側から形を支える器官のため、その低形成は歯列全体の形態に影響します。

頭蓋骨癒合症(クルーゾン症候群及び尖頭合指症を含む)

お口まわりに考えられる症状

上あごの著しい劣成長による重度の反対咬合、狭い高口蓋、著しい叢生、歯の萌出異常。

全身に考えられる症状

頭蓋縫合の早期癒合による頭蓋変形、眼球突出、中顔面の低形成。尖頭合指症(アペール症候群)では合指症を伴います。

考えられる合併症

頭蓋内圧亢進、視力障害、閉塞性睡眠時無呼吸、難聴。

一般的な治療(お口まわり)

上顎の前方牽引、成人期のLe Fort型骨切り術や上顎骨延長術に伴う矯正治療。

一般的な治療(全身)

乳児期の頭蓋形成術、中顔面の前方移動術、気道の管理。

補足

頭蓋・顔面・気道にまたがる問題で、形成外科・脳神経外科との長期的な連携が必要です。

骨形成不全症

お口まわりに考えられる症状

象牙質形成不全症(歯が灰青色〜黄褐色に透けて見え、摩耗しやすい)、歯冠の破折、埋伏歯、反対咬合。

全身に考えられる症状

骨の脆弱性による易骨折性、青色強膜、低身長、関節の弛緩。

考えられる合併症

反復する骨折、脊柱変形、難聴。

一般的な治療(お口まわり)

弱い矯正力での慎重な治療。歯の構造が弱いため装置の着脱にも配慮します。

一般的な治療(全身)

ビスホスホネート製剤による治療、骨折の管理、リハビリテーション。

補足

ビスホスホネート製剤を使用している場合、抜歯などの外科処置には特別な配慮が必要です。

フリーマン・シェルドン症候群

お口まわりに考えられる症状

著しい開口障害(小さな口)、高口蓋、著しい叢生、小下顎。

全身に考えられる症状

口笛を吹くような特徴的な顔貌、手足の関節拘縮、斜視。

考えられる合併症

摂食障害、麻酔時の気道確保困難、悪性高熱症。

一般的な治療(お口まわり)

開口量が限られるため、装置の装着と処置に工夫を要します。

一般的な治療(全身)

拘縮に対する整形外科的治療、口の開大術。

補足

口笛顔貌症候群とも呼ばれます。開口制限が歯科治療全般の制約となります。

ルビンスタイン・ティビ症候群

お口まわりに考えられる症状

高口蓋、叢生、過剰歯、talon cusp(前歯の裏側の突起)、う蝕の多発。

全身に考えられる症状

幅広い母指と母趾、特徴的な顔貌、低身長、知的発達症。

考えられる合併症

先天性心疾患、反復性の呼吸器感染、閉塞性睡眠時無呼吸。

一般的な治療(お口まわり)

う蝕予防を重視し、ご本人の協力度に応じた治療計画とします。

一般的な治療(全身)

心疾患の管理、療育。

補足

麻酔時に不整脈を起こしやすいとの報告があり、外科処置時は注意が必要です。

染色体欠失症候群

お口まわりに考えられる症状

口蓋裂・粘膜下口蓋裂、先天性欠如歯、エナメル質形成不全、上下顎の劣成長。欠失部位により所見は異なります。

全身に考えられる症状

成長障害、知的発達症、特徴的な顔貌。

考えられる合併症

先天性心疾患、免疫不全(22q11.2欠失症候群など)、けいれん。

一般的な治療(お口まわり)

口蓋裂を伴う場合はそれに準じた管理。感染への配慮を要します。

一般的な治療(全身)

欠失部位に応じた各科での管理。

補足

22q11.2欠失症候群(旧称ディジョージ症候群)など、複数の疾患が含まれます。

ラーセン症候群

お口まわりに考えられる症状

高口蓋、口蓋裂、小下顎、咬合異常。

全身に考えられる症状

多発性の関節脱臼(股・膝・肘)、扁平な顔貌、脊椎の異常。

考えられる合併症

頸椎の不安定性、脊髄損傷のリスク、呼吸障害。

一般的な治療(お口まわり)

頸椎の状態に配慮し、頭位を大きく変えない体位で治療します。

一般的な治療(全身)

関節脱臼の整復と装具、頸椎の固定術。

補足

頸椎不安定症があるため、診療時の姿勢に特別な注意が必要です。

濃化異骨症

お口まわりに考えられる症状

下顎角の消失、下顎の低形成による小下顎、乳歯の晩期残存、永久歯の萌出遅延と埋伏、著しい叢生。

全身に考えられる症状

骨密度の上昇と骨の脆弱性、低身長、大泉門の閉鎖遅延、末節骨の低形成。

考えられる合併症

病的骨折、顎骨骨髄炎、閉塞性睡眠時無呼吸。

一般的な治療(お口まわり)

抜歯を要する場合は骨髄炎のリスクを考慮した慎重な判断を行います。埋伏歯の管理が中心となります。

一般的な治療(全身)

骨折の管理、成長ホルモン治療が検討されることがあります。

補足

画家トゥールーズ=ロートレックが罹患していたとされる疾患です。

6歯以上の先天性部分無歯症

お口まわりに考えられる症状

永久歯が6歯以上生まれつき欠如している状態です。乳歯の晩期残存、歯列のすき間、咬合の低下、対合歯の挺出。

全身に考えられる症状

単独で生じることが多く、全身症状を伴わない場合が大半です。

考えられる合併症

咀嚼機能の低下、審美的な課題、顎堤の発育不良。

一般的な治療(お口まわり)

残存する歯を活かした咬合の再構成、すき間の集約または保存、補綴(ブリッジ・インプラント)を見据えた矯正。

一般的な治療(全身)

特別な全身治療を要さないことが多いものの、外胚葉異形成症など背景疾患の鑑別が行われます。

補足

背景に症候群がない単独の欠如でも、6歯以上であれば保険適用の対象となります。

CHARGE症候群

お口まわりに考えられる症状

口蓋裂、小下顎、嚥下障害、咬合異常。

全身に考えられる症状

眼の欠損、後鼻孔閉鎖、成長障害、耳の奇形と難聴。

考えられる合併症

先天性心疾患、呼吸障害、嚥下障害による経管栄養、視力・聴力障害。

一般的な治療(お口まわり)

摂食機能を踏まえた管理。感覚障害に配慮した診療環境を整えます。

一般的な治療(全身)

後鼻孔閉鎖の手術、心疾患の管理、人工内耳を含む聴覚管理。

補足

視覚と聴覚の両方に障害を伴うことがあり、コミュニケーション面の配慮が重要です。

マーシャル症候群

お口まわりに考えられる症状

口蓋裂、小下顎、上顎の低形成、咬合異常。

全身に考えられる症状

鼻根部の陥凹、近視、感音難聴、白内障。

考えられる合併症

網膜剥離、進行性の難聴。

一般的な治療(お口まわり)

口蓋裂に準じた管理、成長を見ながらの咬合の構築。

一般的な治療(全身)

眼科的管理、聴力管理。

補足

スティックラー症候群と近縁で、鑑別が問題となることがあります。

成長ホルモン分泌不全性低身長症

お口まわりに考えられる症状

下顎の劣成長による下顎後退、歯の萌出遅延、歯根形成の遅れ、小さな歯列弓。

全身に考えられる症状

成長速度の低下による低身長。

考えられる合併症

成長ホルモン治療中の成長パターンの変化。

一般的な治療(お口まわり)

成長ホルモン治療により下顎の成長が変化することがあるため、治療時期の設定に配慮します。

一般的な治療(全身)

成長ホルモン補充療法。

補足

成長ホルモン治療の開始・終了時期が、矯正治療の計画と密接に関わる疾患です。

ポリエックス症候群(XXX症候群、XXXX症候群及びXXXXX症候群を含む)

お口まわりに考えられる症状

高口蓋、歯の形成異常、叢生、咬合異常。

全身に考えられる症状

X染色体の過剰による発達の遅れ、高身長(XXX)または低身長、筋緊張低下。

考えられる合併症

学習障害、行動面の課題、卵巣機能不全。

一般的な治療(お口まわり)

ご本人の理解度に応じた無理のない治療計画。

一般的な治療(全身)

発達支援、必要に応じたホルモン補充。

補足

X染色体の数が多いほど症状が顕著になる傾向があります。

リング18症候群

お口まわりに考えられる症状

口蓋裂、小下顎、う蝕の多発、歯の形成異常。

全身に考えられる症状

18番染色体の環状化による成長障害、知的発達症、特徴的な顔貌。

考えられる合併症

免疫不全(IgA欠損)、難聴、先天性心疾患。

一般的な治療(お口まわり)

感染への配慮を要する治療計画。口腔衛生管理を重視します。

一般的な治療(全身)

免疫の評価、聴力管理、療育。

補足

18番染色体の欠失部位により症状は多様です。

リンパ管腫

お口まわりに考えられる症状

舌や口底に生じた場合、巨舌、開咬、下顎前突、歯列弓の拡大、歯の位置異常。

全身に考えられる症状

頸部や顔面の軟らかい腫瘤。

考えられる合併症

感染時の急激な腫脹による気道閉塞、出血、審美的な課題。

一般的な治療(お口まわり)

腫瘍の治療と並行した咬合の管理。巨舌が改善しない場合は開咬が残存しやすくなります。

一般的な治療(全身)

硬化療法(OK-432など)、外科的切除、経過観察。

補足

口腔内に及ぶ場合、咬合への影響が長期に及ぶことがあります。

全前脳胞症

お口まわりに考えられる症状

正中部の異常(単一中切歯、口蓋裂、上顎正中部の低形成)、著しい咬合異常。

全身に考えられる症状

前脳の分割不全による中枢神経の異常、顔面正中構造の低形成。

考えられる合併症

けいれん、内分泌異常(尿崩症)、発達の遅れ。

一般的な治療(お口まわり)

全身状態に応じた口腔管理を中心とし、可能な範囲で咬合を整えます。

一般的な治療(全身)

けいれんと内分泌の管理、栄養管理。

補足

軽症型では単一中切歯のみが所見となることがあり、歯科が発見の契機となる場合があります。

クラインフェルター症候群

お口まわりに考えられる症状

巨大歯(タウロドント)、下顎の過成長傾向、咬合異常。

全身に考えられる症状

47,XXYなどの性染色体異常による高身長、女性化乳房、性腺機能低下。

考えられる合併症

不妊、骨粗鬆症、代謝症候群。

一般的な治療(お口まわり)

骨の状態を考慮した治療。歯根の形態的特徴に配慮します。

一般的な治療(全身)

テストステロン補充療法。

補足

タウロドント(歯髄腔が大きい歯)が特徴的にみられます。

偽性低アルドステロン症

お口まわりに考えられる症状

唾液中のナトリウム濃度上昇に伴う口腔内環境の変化、エナメル質の異常が報告されています。

全身に考えられる症状

腎尿細管でのアルドステロン抵抗性による高カリウム血症、低ナトリウム血症、脱水。

考えられる合併症

重篤な電解質異常、成長障害。

一般的な治療(お口まわり)

全身状態が安定している時期に、負担の少ない範囲で治療を行います。

一般的な治療(全身)

電解質の補正、食事療法。

補足

ゴードン症候群とも呼ばれます。電解質管理が最優先される疾患です。

ソトス症候群

お口まわりに考えられる症状

早期の歯の萌出、高口蓋、狭窄歯列、下顎前突傾向、著しい叢生。

全身に考えられる症状

出生時から乳幼児期の過成長(高身長・大頭)、特徴的な顔貌、発達の遅れ。

考えられる合併症

けいれん、側弯、心・腎の奇形。

一般的な治療(お口まわり)

成長のパターンが通常と異なるため、治療時期の判断に注意を要します。

一般的な治療(全身)

発達支援、けいれんの管理。

補足

幼少期に急速に成長し、成人身長は正常範囲となることが多い疾患です。

グリコサミノグリカン代謝障害(ムコ多糖症)

お口まわりに考えられる症状

歯肉の肥厚、歯の萌出遅延、歯冠の形成異常、顎骨内の透過像、開咬、下顎の変形。

全身に考えられる症状

ムコ多糖の蓄積による特徴的な顔貌、関節拘縮、低身長、肝脾腫。

考えられる合併症

心弁膜症、閉塞性睡眠時無呼吸、角膜混濁、脊髄圧迫、気道確保困難。

一般的な治療(お口まわり)

開口量と気道の状態に配慮した治療。歯肉肥厚に対する口腔衛生管理を重視します。

一般的な治療(全身)

酵素補充療法、造血幹細胞移植、心・呼吸の管理。

補足

気道確保が難しく、全身麻酔に高いリスクを伴うため、外科処置は慎重に検討されます。

線維性骨異形成症

お口まわりに考えられる症状

顎骨の膨隆による顔面非対称、歯の位置異常と萌出障害、咬合平面の傾斜。

全身に考えられる症状

骨が線維性の組織に置き換わることによる骨の変形と脆弱性。

考えられる合併症

病的骨折、視神経など脳神経の圧迫、まれに悪性化。

一般的な治療(お口まわり)

病変の進行が落ち着いてからの矯正が原則です。骨の状態により歯の移動が制限されます。

一般的な治療(全身)

経過観察、変形に対する骨形成術、ビスホスホネート製剤。

補足

マッキューン・オルブライト症候群の一症状として現れることがあります。

スタージ・ウェーバ症候群

お口まわりに考えられる症状

顔面の血管腫に一致した側の歯肉の肥厚と易出血性、歯の早期萌出、顎骨の過成長、咬合の非対称。

全身に考えられる症状

三叉神経支配領域のポートワイン母斑、脳軟膜の血管腫。

考えられる合併症

けいれん、片麻痺、緑内障、知的発達症。

一般的な治療(お口まわり)

出血のリスクを厳重に評価します。歯肉の状態により清掃が難しく、予防管理が重要です。

一般的な治療(全身)

けいれんの管理、緑内障の治療、レーザーによる母斑の治療。

補足

口腔内に血管病変が及ぶ場合、抜歯などで大量出血の危険があり、事前評価が必須です。

ケルビズム

お口まわりに考えられる症状

両側下顎角部の対称性の膨隆、多数歯の埋伏・転位・欠如、乳歯の早期脱落、著しい咬合異常。

全身に考えられる症状

小児期に始まり思春期に進行が止まる、顎骨の線維性病変。

考えられる合併症

咀嚼・発音・呼吸の障害、審美的な課題。

一般的な治療(お口まわり)

思春期以降、病変の進行が止まってからの矯正が原則です。埋伏歯の牽引を含みます。

一般的な治療(全身)

経過観察が基本。変形が著しい場合は骨の削除術。

補足

自然に軽快する傾向があるため、時期を待つ判断が重要になります。

偽性副甲状腺機能低下症

お口まわりに考えられる症状

エナメル質形成不全、歯根の短縮、歯の萌出遅延、歯冠の低形成。

全身に考えられる症状

副甲状腺ホルモン抵抗性による低カルシウム血症、短い中手骨・中足骨、円形顔貌、低身長。

考えられる合併症

テタニー(けいれん)、白内障、基底核の石灰化。

一般的な治療(お口まわり)

歯根短縮に配慮した弱い矯正力での治療。エナメル質の脆弱性に応じた予防管理。

一般的な治療(全身)

活性型ビタミンD製剤とカルシウムの補充。

補足

歯の所見が診断の手がかりとなることがあります。

Ekman-Westborg-Julin症候群

お口まわりに考えられる症状

巨大歯、歯冠と歯根の形態異常、多数の結節、萌出異常。

全身に考えられる症状

報告例が少なく、全身症状は限定的とされています。

考えられる合併症

咬合の確立の困難、う蝕リスクの上昇。

一般的な治療(お口まわり)

歯の形態異常に応じた咬合の再構成。補綴との連携が必要になります。

一般的な治療(全身)

特別な全身治療を要さないことが多いとされます。

補足

歯の形態異常を主体とする、報告例のきわめて少ない疾患です。

常染色体重複症候群

お口まわりに考えられる症状

口蓋裂、小下顎、歯の形成異常、咬合異常。重複部位により所見は異なります。

全身に考えられる症状

成長障害、知的発達症、特徴的な顔貌。

考えられる合併症

先天性心疾患、けいれん、免疫の異常。

一般的な治療(お口まわり)

全身状態とご本人の協力度に応じた計画とします。

一般的な治療(全身)

重複部位に応じた各科での管理。

補足

染色体の一部が過剰になることで生じる、複数の疾患の総称です。

巨大静脈奇形(頸部口腔咽頭びまん性病変)

お口まわりに考えられる症状

舌・頬・口底のびまん性の腫脹、巨舌、開咬、歯の移動と位置異常、易出血性。

全身に考えられる症状

頸部から口腔咽頭に及ぶ静脈の奇形による腫脹。

考えられる合併症

気道閉塞、大量出血、静脈石による疼痛、嚥下障害。

一般的な治療(お口まわり)

出血リスクの評価が最優先です。歯科処置には事前の画像評価と準備を要します。

一般的な治療(全身)

硬化療法、外科的縮小術、気道の管理。

補足

通常の抜歯でも致命的な出血をきたす危険があり、専門施設での対応が原則です。

毛・鼻・指節症候群(Tricho Rhino Phalangeal症候群)

お口まわりに考えられる症状

多数の先天性欠如歯または過剰歯、上顎の劣成長、咬合異常。

全身に考えられる症状

細く疎な毛髪、洋梨状の鼻、短い指節骨、低身長。

考えられる合併症

股関節の変形(ペルテス病様)、関節症。

一般的な治療(お口まわり)

欠如歯・過剰歯を踏まえた咬合の再構成。

一般的な治療(全身)

整形外科的な管理。

補足

毛髪・鼻・指の三徴が特徴で、歯の異常を伴うことが知られています。

クリッペル・ファイル症候群(先天性頸椎癒合症)

お口まわりに考えられる症状

口蓋裂、小下顎、開口障害、咬合異常。

全身に考えられる症状

頸椎の癒合による短い頸部、頭部の可動域制限、生え際の低位。

考えられる合併症

脊髄症状、難聴、腎奇形、側弯。

一般的な治療(お口まわり)

頸部を動かせないため、診療時の体位に特別な配慮を要します。開口障害がある場合は装置の選択も制限されます。

一般的な治療(全身)

脊椎の管理、聴力と腎機能の評価。

補足

頸部の可動制限が、歯科診療全般の大きな制約となります。

アラジール症候群

お口まわりに考えられる症状

エナメル質の形成不全、歯の緑色変化(高ビリルビン血症による)、う蝕の多発。

全身に考えられる症状

肝内胆管の減少による胆汁うっ滞、黄疸、特徴的な顔貌、蝶形椎。

考えられる合併症

肝硬変、肺動脈狭窄などの心疾患、腎障害、出血傾向。

一般的な治療(お口まわり)

出血傾向と肝機能に配慮した治療。エナメル質の脆弱性に応じた予防管理を行います。

一般的な治療(全身)

胆汁うっ滞の管理、重症例では肝移植、心疾患の管理。

補足

肝機能障害に伴う出血傾向があるため、観血的処置には主治医との連携が必要です。

高IgE症候群

お口まわりに考えられる症状

乳歯の晩期残存(永久歯が生えても乳歯が抜けない)、高口蓋、口腔カンジダ症、口内炎の反復。

全身に考えられる症状

血清IgEの著明な上昇、反復する皮膚膿瘍と肺炎、湿疹。

考えられる合併症

肺の気瘤形成、骨折しやすさ、血管の異常。

一般的な治療(お口まわり)

感染予防を最優先とした管理。晩期残存乳歯の抜去と萌出の誘導を行います。

一般的な治療(全身)

抗菌薬による感染予防、皮膚と肺の管理。

補足

乳歯の晩期残存は本症候群の特徴的所見の一つで、歯科が診断に寄与することがあります。

エーラス・ダンロス症候群

お口まわりに考えられる症状

歯肉の脆弱性と易出血性、早期発症の歯周炎、顎関節の脱臼、粘膜の裂けやすさ、歯の形成異常。

全身に考えられる症状

皮膚の過伸展性と脆弱性、関節の過可動性、創傷治癒の遅延。

考えられる合併症

血管型では動脈・消化管の破裂、関節の反復脱臼、慢性疼痛。

一般的な治療(お口まわり)

顎関節への負担を避け、開口量に配慮します。粘膜と歯肉を傷つけない愛護的な操作が必要です。

一般的な治療(全身)

型に応じた管理。血管型では血管の定期評価。

補足

血管型では致命的な合併症の危険があり、外科処置には特別な注意が必要です。

ガードナー症候群(家族性大腸ポリポージス)

お口まわりに考えられる症状

顎骨の骨腫(とくに下顎角部)、多数の埋伏歯と過剰歯、歯の形成異常。

全身に考えられる症状

大腸の多発性ポリープ、軟部組織の腫瘍(類上皮嚢胞・線維腫)。

考えられる合併症

大腸ポリープの高率な癌化、小腸・甲状腺の腫瘍。

一般的な治療(お口まわり)

骨腫と埋伏歯の管理。矯正治療は病変の状態を確認しながら計画します。

一般的な治療(全身)

大腸内視鏡による定期的な監視と、時期をみた大腸全摘術。

補足

顎骨の骨腫や埋伏歯が大腸ポリープに先行して現れることがあり、歯科所見が早期発見の契機となる場合があります。

原発性低リン血症性くる病

お口まわりに考えられる症状

歯髄腔の拡大と象牙質の形成不全による自然発生の歯髄壊死と歯根膿瘍(むし歯がないのに膿瘍を生じる)、エナメル質の低形成、歯の早期喪失。

全身に考えられる症状

腎でのリン再吸収障害による低リン血症、骨の石灰化障害、O脚などの下肢変形、低身長。

考えられる合併症

反復する歯性感染、骨の変形と疼痛、成長障害。

一般的な治療(お口まわり)

感染予防と早期の歯内治療が中心です。矯正は歯と骨の状態を評価したうえで慎重に計画します。

一般的な治療(全身)

活性型ビタミンDとリン製剤の投与、近年は抗FGF23抗体製剤。整形外科的治療。

補足

むし歯がないのに膿瘍を繰り返すことが特徴で、歯科が診断の手がかりとなることがあります。令和8年度改定で対象に加わりました。

ロイス・ディーツ症候群

お口まわりに考えられる症状

口蓋裂または口蓋垂裂、高口蓋、叢生、下顎後退。

全身に考えられる症状

動脈の蛇行と拡張、眼間開離、関節の過可動性、皮膚の菲薄化。

考えられる合併症

大動脈瘤・大動脈解離(マルファン症候群より若年で生じやすい)、内臓破裂。

一般的な治療(お口まわり)

血圧の変動を避ける配慮が必要です。ストレスの少ない診療環境を整えます。

一般的な治療(全身)

大動脈の厳重な定期評価と早期の予防的手術、β遮断薬・ARB。

補足

大動脈の合併症が若年で生じやすいため、循環器科との連携が不可欠です。令和8年度改定で対象に加わりました。

18歳未満の患者であって、連続した3歯以上の先天性欠如歯に起因した咬合異常

お口まわりに考えられる症状

連続する3歯以上の永久歯が生まれつき欠如している状態です。乳歯の晩期残存、大きなすき間、咬合の低下、対合歯の挺出、歯列の非対称。

全身に考えられる症状

単独で生じることが多く、全身症状を伴わないのが一般的です。

考えられる合併症

咀嚼機能の低下、顎堤の発育不良、審美的な課題、対合歯の過剰な挺出。

一般的な治療(お口まわり)

残存歯を活かした咬合の再構成、すき間の集約または保存、将来の補綴を見据えた矯正治療。

一般的な治療(全身)

特別な全身治療を要さないことがほとんどです。

補足

令和8年度の改定で新たに対象となりました。従来は「6歯以上」でなければ対象外でしたが、連続した3歯以上であれば18歳未満で対象となります。

その他顎・口腔の先天異常

お口まわりに考えられる症状

上記に列挙されていない、顎や口腔の先天的な形態異常に伴うかみ合わせの異常が該当します。

全身に考えられる症状

疾患により異なります。

考えられる合併症

疾患により異なります。

一般的な治療(お口まわり)

個別の状態に応じた診断と治療計画が必要です。

一般的な治療(全身)

疾患により異なります。

補足

個別の判断となるため、該当の可能性がある場合は診察と検査を通じて確認します。

※上記は令和8年(2026年)度の診療報酬改定(令和8年6月1日適用)時点で、全69疾患です。対象疾患は約2年に一度の改定で追加・見直しが行われます。

自立支援医療制度(育成医療・更生医療)

唇顎口蓋裂や特定の先天性疾患の場合には、育成医療、更生医療といった医療費の自己負担額を軽減する公費負担医療制度があります。顎変形症は適用外です。

  • 育成医療:18歳未満の児童が対象
  • 更生医療:18歳以上の身体障害者手帳の交付を受けた方

育成医療や更生医療を申請された方は、所得に応じて、自己負担額が原則1割となり、さらに1ヶ月の自己負担額の上限が設けられます。結果として通常の健康保険よりも、医療費の軽減措置を受けることができます。

育成医療・更生医療の1か月の自己負担額上限

  • 市町村民税235,000円以上
    育成医療:対象外 / 更生医療:対象外
  • 中間所得(2)市町村民税33,000円以上
    育成医療:10,000円 / 更生医療:医療保険の高額療養費
  • 中間所得(1)市町村民税33,000円未満
    育成医療:5,000円 / 更生医療:医療保険の高額療養費
  • 低所得(2)市町村民税非課税(本人収入800,001円以上)
    育成医療:5,000円 / 更生医療:5,000円
  • 低所得(1)市町村民税非課税(本人収入800,000円以下)
    育成医療:2,500円 / 更生医療:2,500円
  • * 厚生労働省 自立支援医療 利用者負担の図を一部改編

育成医療の申請について

自治体ごとに所定の書類がありますので、各市区町村にお問い合わせください。また自治体に提出する書類の一つに、当院で作成した意見書が必要となります。育成医療を申請する際は、当院までその旨をお伝えください。

更生医療の申請について

身体障害者手帳(咀嚼機能障害4級)の交付を申請することになります。なお唇顎口蓋裂の場合、医師と歯科医師からの「身体障害者診断書・意見書」が必要となります。その意見書を作成できるのが、身体障害者福祉法第15条に基づく指定医師となります。18歳以上の唇顎口蓋裂の方は受診の際にその旨をお伝えください。

このページの監修

尾崎 周作(歯学博士/東京科学大学大学院修了)

  • 尾崎矯正歯科クリニック 院長
  • 東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)咬合機能矯正学分野 臨床教授
  • 日本歯科専門医機構認定 矯正歯科専門医

最終更新:2026年8月3日

当ページの内容は一般的な事柄についてのご説明です。診断や治療方針は、ご来院のうえ、口腔内を拝見してから承ります。

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