矯正治療法

外科矯正 サージェリーファーストアプローチ

短期間で、口元・輪郭・あごの骨格と外見が改善ができる外科的な矯正治療法です。

サージェリーファーストアプローチとは、まずはじめに手術を行い、外見や骨格的なズレを改善してから、かみ合わせの歯列矯正を行う、外科矯正(手術を併用する矯正歯科治療)の一つの方法です。従来の外科矯正と比べ、治療期間の大幅な短縮を図ることができます。

「骨格的な問題がある」「顔立ちが気になる」など、通常の矯正治療だけでは治せない症状も改善できる治療法です。歯並び・かみ合わせなど、お口の健康や機能を考慮した上で、口元・輪郭・あご等の見た目を改善することができます。

従来の外科矯正との比較

画像:サージェリーファースト
画像:従来の外科矯正

メリット

治療期間は約1/4〜1/2

従来の外科矯正では、術前矯正(手術の前に行う矯正治療)が必要ですが、サージェリーファーストアプローチでは必要ありません。治療期間が0.5〜1.5年程度と、約1/4〜1/2まで短縮できます。術後はほとんど噛めない状態になりますが、歯は自然にかみ合う方向に移動しようとするため、この噛めない状態が逆に歯の移動効率を上げ、治療期間が短縮されます。

はじめに外見から改善

従来の外科矯正では、見た目が治るのは治療開始から1.5〜2年後です。また術前矯正では、歯をさらにずらしていくので、見た目も手術直前が最もずれた状態となります。一方サージェリーファーストアプローチの場合、最初に手術を行うため、最初に見た目が治ります。それから歯並びやかみ合わせを治していきます。

目立たない・見えない矯正装置が使用可能

私費診療であるため、保険診療におけるルールの制約がなく、目立たない唇側からの矯正装置・舌側矯正・マウスピース型カムタムメイド矯正歯科装置、など全ての治療法から効率的で最良の装置を選択することが可能です。

デメリット

術後3〜4ヵ月程度、かみ合わせが不安定

すぐに外科手術を行うため、術後のかみ合わせが安定するまでに3〜4ヵ月程度かかります。時間とともに改善していきます。

保険が効かない

保険適用されていない治療法です。手術と矯正治療ともに私費診療となります。

技術と経験が必要

手術と矯正の両方で、一定以上のレベルの知識・技術・経験・対応力が必要です。どこの医院でも受けられる治療法ではありません。当院は外科矯正の豊富な経験を持ち、経験豊かな外科医との密な連携にて治療を行っています。

治療の流れ

画像:治療の流れ

01 初診相談

02 精密検査

03 診断

04 手術準備

手術後のあごの位置を安定させるための補助として、矯正装置と手術用のワイヤーを装着します。

05 入院・手術

比較的負担の少ない手術の場合には入院せず、日帰りで手術を行う場合もあります。

06 矯正治療の開始〜定期的な通院

手術によって、あごや輪郭などの見た目が改善された状態です。さらに、かみ合わせや歯並びを改善するため、矯正治療を開始します。矯正治療期間は、比較的歯並びが整っている患者さんの場合は6〜9ヵ月、一般的には1〜1.5年ほどです。

07 治療完了〜保定・アフターケア

矯正治療後に、歯や骨の安定を得る目的で、2年程度の保定を行います。

適用できる症状

骨格性不正咬合(骨格の問題が大きい不正咬合)に対して、外科的矯正治療が適用されます。

画像:下顎前突症

01 下顎前突症

下あごが大きい、長い、など。下あごが前に出ているため、前歯のかみ合わせが反対になり、受け口になっている症状。上の前歯は出っ歯のように傾き、逆に下の前歯が内側に傾いている場合がある。

画像:上顎後退症

02 上顎後退症

上あごが引っ込んでいる、三日月のように顔がへこんでいる、怒った表情に見える、など。下あごの大きさは普通だが、上あごが小さく引っ込んでいるため、反対咬合や受け口になっている症状。上の歯はでこぼこや八重歯が多い。

画像:下顎前突症

03 上顎前突症

出っ歯、上唇が出ている、など。上あごや上の前歯が出ていることが原因の症状。口元が出ていることが多い。

画像:下顎後退症

04 下顎後退症

下あごが小さい、丸い、あごがない、など。下あごが下がっていることで出っ歯になっている症状。下の歯にでこぼこが多い。上の歯を下げることで、相対的に下あごの存在感が出るような治療方針が望まれる。

画像:下顎前突症

05 ガミースマイル

笑うと歯茎が見える。上唇の垂直的な長さに対して、上あごの垂直的な高さが大きく、歯茎がたくさん見えて目立つ症状。上の歯を内側と上方へ移動する、または上あご自体を外科的手術で上方へ持ち上げる、などで改善をはかる。

画像:下顎側方偏位

06 下顎側方偏位

お顔が左右のどちらかに曲がっている症状。口角が曲がっている、咬合平面が曲がっている、上下の歯の正中がずれている、左右いずれかのかみ合わせだけが反対になっている、など。下あごだけがずれている場合と、上あごと下あごの両方がずれている場合がある。

最適な手術法の選択について

画像:下顎前突症

01 下顎前突症

面長・あごが長い・出ている・受け口

画像:下顎後方移動術

下顎後方移動術

下あご全体を後ろに下げます。上あごの位置に問題がなく、下あごが前に出ている場合に適用です。

画像:上下顎同時移動術

上下顎同時移動術

下下あごを後ろに、上あごを前に出します。あごの位置や傾きに問題があり、下あごが前に出ている場合に適用です。

画像:下顎分節骨切り術

下顎分節骨切り術

下あごの歯茎の一部分だけを後ろに下げます。「おとがい(下あごの先端)」の位置に問題がなく、下唇が出ていて歯の傾斜がある場合に適用になります。ただ、抜歯が必要であることや、改善の程度に制限があるので、適用になることは多くありません。特に「おとがい」が出ているような方には、お勧めできません。

画像:上顎前突症

02 上顎前突症

出っ歯・上唇が出ている

画像:上顎LefortⅠ型骨きり術

上顎LefortⅠ型骨きり術

上あごを上、後ろに動かします。上あごを短くして、しかも後ろに下げることができるため、ほとんどの症例に適応でき、また変化の程度の調整が行いやすい術式です。口唇や鼻の不自然な変化が少ないため、安定して良い結果が得られます。おとがい形成も併用する場合があります。

画像:下顎前方移動術

下顎前方移動術

下あごが小さく、前方に移動した方が良い場合に、下あごを前方に移動します。ただし、下あごの前方移動は後戻りしやすいので、移動量が少なくて済む場合に限られます。

画像:上下顎同時移動術

上下顎同時移動術

上あごの移動だけでは、かみ合わせの調整が困難な場合、上顎骨切りで上あごを後ろに下げ、下顎骨切りで下あごを回転させながら前に出します。また下あごがかなり小さい場合は、前に移動させた方が顔貌の改善が得られやすいため、この方法の適応となります。

画像:上下顎(両顎)前突症

03 上下顎(両顎)前突症

口元が出ている・上下の歯が出ている・口が閉じづらい

画像:上下分節骨切り術

上下分節骨切り術

上下の歯茎の前方部分を、後ろに下げます。上下の歯茎の骨が前に出ている場合に適応となります。しかし抜歯が必要なこと、歯の間の隙間が残りやすいこと、移動量に制限があること、後方への移動しかできないこと、鼻の形の変化が大きいことなどから、適応になる症例は限られています。

画像:コルチコトミー(歯の動きを早くする方法)

コルチコトミー(歯の動きを早くする方法)

歯茎の骨に細くスジのような切れ目を入れることで、骨の代謝を促進し、歯の移動効率を高め、治療期間の短縮を図る方法です。動かす歯の量や状況により適応の症例も変わります。

画像:上顎LefortⅠ型骨切り+下顎分節骨切り術

上顎LefortⅠ型骨切り+下顎分節骨切り術

上顎骨切りで上あごを後ろに下げ、下あごの歯ぐきの部分を後ろに下げます。上あごの移動だけでは、かみ合わせの調整が困難な場合は、下顎骨切りと同時に行います。

手術法の解説

下顎骨切り術

移動の自由度が高く、固定性にも優れた方法です。下顎骨骨切り術専用に作られたプレートで固定するため、顎間固定が不要です。後方だけでなく、前方移動や回転も可能です。

画像:下顎骨切り術 01
1

計画に合わせてデザインをします。

画像:下顎骨切り術 02
2

下顎骨を分割するように切ります。

画像:下顎骨切り術 03
3

下顎骨を移動しプレートで固定します。

上顎骨切り術

移動の自由度が高く、固定性にも優れた方法です。前方だけでなく、上方・後方移動や回転も可能です。

画像:上顎骨切り術 01
1

計画に合わせてデザインをします。

画像:上顎骨切り術 02
2

上顎骨を切ります。

画像:上顎骨切り術 03
3

上顎骨を移動しプレートで固定します。

おとがい骨切り術

長いおとがいや、短いおとがいに適応になる術式です。前方および上方への移動は、皮膚軟部組織の応答もよいのでよく行われます。後方への移動は、軟部組織の反応に乏しいので思ったほどの効果が出ないことがあります。

画像:おとがい骨切り術 01
1

計画に合わせてデザインをします。

画像:おとがい骨切り術 02
2

骨を切ってプレートもしくはワイヤーで固定します。

上顎分節骨切り術

歯を抜き、生じたスペースを利用して前歯の6本前後を後方に移動する方法です。移動の自由度はあまり高くなく、後方への移動だけになります。

画像:上顎分節骨切り術 01
1

計画に合わせてデザインをします。

画像:上顎分節骨切り術 02
2

上顎骨を部分的に切って移動し、プレートで固定します。

下顎分節骨切り術

歯を抜き、生じたスペースを利用して前歯の6本前後を後方に移動する方法です。移動の自由度はあまり高くなく、後方への移動だけになります。

画像:下顎分節骨切り術 01
1

計画に合わせてデザインをします。

画像:下顎分節骨切り術 02
2

下顎骨を部分的に切って移動し、プレートで固定します。

コルチコトミー(歯の動きを早くする方法)

画像:コルチコトミー(歯の動きを早くする方法)

歯茎の骨に細くスジのような切れ目を入れることで、骨の代謝を促進し、歯の移動効率を高め、治療期間の短縮を図る方法です。入院などは必要なく、比較的簡単な外科処置で15分〜1時間程度で終わります。

術後のケア

手術は安全に行われますが、まれに合併症が生じることがあります。早期に適切な治療が行われれば、ほとんど問題なく治癒します。術後のケアは、治療に欠かすことのできない重要なものです。

術後経過

腫れ

手術後4〜5日目くらいまでがピークで、その後少しずつ消退します。2週後で約6〜7割方引きますが、むくみが取れるまで約半年かかります。

内出血

手術後4日目くらいまで、頬から首にかけて内出血が生じることがあります。約10日で消失し、残ることはありません。

合併症

感染

きわめてまれですが、親知らずが骨に埋まっている場合などに生じることがあります。抗菌薬や抜歯 プレート抜去などの適切な処置を行うことで、ほとんどの場合1〜2週間以内で治癒します。

血腫

出血により血の塊が創の中にできることがあります。少ない量の場合は自覚症状はほとんどありません。多い場合はやや硬いしこりが1〜2ヵ月残りますが、その後自然になくなって消えます。

プレートの脱落

きわめてまれですが、術後1〜2週の間に骨を止めたプレートがずれたり、脱落したりする場合があります。骨の安定性に応じて顎間固定、もしくは再手術によるプレート固定が必要になります。

後遺症

感覚麻痺

下顎骨切り術の場合にのみ、下唇から下あごにかけて一時的に感覚が麻痺することがあります(約30%)。4〜9ヵ月ほどで回復しますが、約3〜5%の方で軽度の麻痺が残る可能性があります。この麻痺は服の上から皮膚を触られているような感じで、米粒がついてもわかりにくい、シェーバーがあたっているのがわかりにくい、コップに触れているのがわかりにくい、などの症状です。

形の変化

皮膚の緩みや鼻の形の変化など、骨の移動にともなう軟部組織の「余り」が残ることがあります。これは個人差・年齢差・骨の移動量によっても異なります。

よくいただくご質問

保険は使えますか

入院は必要ですか

顎間固定はしますか

いつから食事ができますか

歯磨きはいつからできますか

いつから術後矯正を行いますか

手術後の通院は何回必要ですか

プレートは除去しますか

傷は目立ちますか

痛みはありますか

支払いは分割でも可能ですか

遠方から伺いますが、1日あれば検査の結果までわかりますか

手術はどこで行いますか

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