矯正治療のサポート
保定を成功させるために
保定を成功させる5つのポイント
当院は、治療の終了時点で整っていることに加えて、その状態が長期にわたって保たれることを、治療目標のひとつとして掲げています。矯正歯科治療は装置を外した時点で完了するものではなく、その後の保定(リテンション)までを含めて一つの治療です。ここでは、治療後の状態を保つうえで重要となる事項をご説明します。
01 保定装置の用法を守ること
移動した歯の周囲では、歯槽骨の再構築と歯根膜線維の再配列が進みます。この過程が落ち着くまでの間、保定装置(リテーナー)を、担当する歯科医師が指示した使用時間と方法のとおりに使用していただくことが最も重要です。使用時間が指示より短い場合、後戻りが生じる可能性が高くなります。
02 適切な矯正治療を受けること
治療の終了時点における歯の位置が、その方の口唇・舌・咀嚼筋の力が釣り合う位置に収まっていることが、安定に寄与します。当院は、見た目の並びのみを整えるのではなく、上下の歯の接触関係、歯軸の傾き、歯根の平行性までを確認したうえで装置を外しています。
03 適切なタイミングで矯正治療を開始すること
成長期のお子さまの場合、顎骨の成長を利用できる時期に治療を行うことが、結果の安定に関わります。開始が早すぎると、治療期間が長くなるわりに得られる変化が限られることがあり、遅すぎると成長を利用できる時期を過ぎてしまうことがあります。適切な開始時期は不正咬合の種類と成長の段階により異なりますので、始める年齢・タイミングもあわせてご覧ください。
04 歯並びに影響する癖と生活習慣を改善すること
舌を前方に突き出す嚥下癖、口唇を巻き込む癖、口呼吸、指しゃぶりなどが残っている場合、歯には日常的に不正な力が加わり続けます。原因となる機能的な問題が改善されないまま装置を外すと、同じ方向への変化が再び生じやすくなります。当院では必要に応じて口腔筋機能療法(MFT)を行い、機能面からの再発予防に取り組んでいます。
05 歯並びの健康管理を忘れないこと(長期フォローアップ)
私たちの健康は、規則正しい生活をしたり、適度な運動を行ったり、定期的に健康診断を受けたり、様々な努力によって維持されます。体と同様に、歯並びにも経年変化があり、メインテナンスが大切です。
当院では、保定の完了後も、ご希望に応じて数年に1度程度のご来院を承っています。歯並び・かみ合わせ・虫歯・歯周病・顎関節の状態を確認することで、変化を早い段階で把握することができます。受診は任意です。詳しくはリコール管理システム(長期フォローアップ)をご覧ください。
後戻りが起こる仕組み
歯は「動かした位置」に自然にとどまるわけではありません
矯正歯科治療で歯を動かすとき、力の加わった側の歯槽骨は吸収され、反対側には新しい骨がつくられます。この骨の入れ替わりによって歯は移動します。装置を外した直後の歯は、周囲の骨がまだ十分に成熟しておらず、歯根膜の線維も引き伸ばされたまま緊張が残った状態にあります。
この緊張が解けるまでの間、歯は元の位置へ戻ろうとする力を受け続けます。これが後戻り(リラプス)です。後戻りは治療の失敗によって起こるものではなく、生体の反応として本来的に生じうるものであり、だからこそ保定が必要になります。
01 歯根膜線維の弾性による戻り
歯根膜の主線維は、歯の移動に伴って比較的早く再配列されます。一方、歯肉に含まれる歯槽頂上線維(とくに歯頸部を取り囲む線維)は再配列に時間を要し、数か月から年単位で緊張が残ることが知られています。歯の捻れ(回転)を改善した部位で後戻りが起こりやすいのは、このためです。
02 歯槽骨の成熟が追いつかないこと
新しくつくられた骨が、周囲の骨と同じ硬さに成熟するまでには一定の期間がかかります。この期間に保定を行わないと、歯は骨の支持を十分に得られないまま力を受けることになります。
03 口唇・頬・舌の力の釣り合い
歯は、外側からの口唇と頬の力、内側からの舌の力が釣り合う位置に落ち着こうとします。舌の突出癖や口呼吸などが残っている場合、歯には日常的に一定方向の力が加わり続けるため、保定装置を外した後に再び移動が生じることがあります。
04 加齢に伴う生理的な変化
矯正歯科治療を受けたかどうかにかかわらず、加齢とともに下顎前歯部にわずかな叢生が生じることが、長期の追跡調査で報告されています。これは治療の有無にかかわらず起こる生理的な変化であり、完全に防ぐことはできません。長期にわたって保定装置の使用を継続する意義は、この点にもあります。
保定装置の種類と使用期間
保定装置(リテーナー)の種類
保定装置には取り外し式と固定式があり、それぞれに適応と特徴があります。どの装置を用いるかは、治療前の不正咬合の種類、移動させた量と方向、歯周組織の状態、患者さんの生活状況を踏まえて、担当する歯科医師が判断します。ご希望を伺ったうえで決定しますが、ご希望のみで決まるものではありません。
01 取り外し式(可撤式)の保定装置
床とワイヤーを組み合わせたもの(ホーレータイプ)や、歯列全体を透明な材料で覆うもの(クリアタイプ)などがあります。ご自身で着脱でき、清掃が容易である一方、装着時間が指示より短くなると効果が得られません。
取り外し式は、装着している時間だけ働く装置です。食事と歯みがきの際に外していただきますが、それ以外の時間は指示された時間だけ確実に装着してください。
02 固定式の保定装置
細いワイヤーを歯の裏側に接着して固定するものです。ご自身の意思にかかわらず作用が続く一方、接着面に歯石が付着しやすく、清掃が難しくなります。接着が外れた場合は歯が動きはじめますので、気づいた時点で速やかにご来院ください。
使用期間の目安
装置を外した直後は、一日のうち食事と歯みがき以外の時間を装着していただくことが一般的です。その後、経過を確認しながら、段階的に装着時間を短くしていきます。目安として、動的治療(装置で歯を動かした期間)と同程度以上の期間を保定に充てることが多く、下顎前歯部については、可能であれば就寝時のみの使用を長期にわたって継続していただくことをお勧めしています。
保定期間中も、経過の確認のためご来院いただきます。ご来院の間隔は当初は数か月ごと、状態が安定するにつれて長くなります。
費用・リスクと副作用
費用
矯正歯科治療は、一部の例外を除き公的医療保険が適用されない自由診療です。保定に関する費用は次のとおりです。詳細は費用についてのページをご覧ください。
- 保定装置の費用:3,300円(税込)/1本
- 保定期間中のご来院1回あたりの観察費:3,300円(税込)。処置の内容によっては、3,300円〜6,600円(税込・表側矯正の場合)の処置費を申し受けることがあります。
- 紛失・破損により再製作が必要となった場合は、あらためて製作費を申し受けます。
保定に伴うリスクと副作用
- 指示された使用時間を守らなかった場合、歯が移動し、治療前の状態に近づくことがあります。程度によっては、再度の矯正治療が必要となります。
- 保定装置を適切に使用していても、加齢に伴う生理的な変化により、歯並びがわずかに変化することがあります。変化を完全に防ぐことはできません。
- 装置の材料(樹脂・金属)に対してアレルギー反応が生じることがあります。過去に金属アレルギーを指摘された方は、必ず事前にお申し出ください。
- 取り外し式の装置は、装着中に唾液の分泌や発音に一時的な影響が出ることがあります。多くは日数の経過とともに慣れていきます。
- 固定式の装置は、接着部に歯石が沈着しやすく、清掃が不十分な場合には歯肉の炎症や虫歯の原因となることがあります。
- 固定式の装置の接着が部分的に外れた場合、外れたことに気づかないまま歯が意図しない方向へ移動することがあります。定期的なご来院での確認が必要です。
- 装置の破損・変形・紛失があった場合は、そのまま放置せず、速やかに当院までご連絡のうえご来院ください。
装置に不具合が生じたときの対応
取り外し式の装置が割れた・変形した、あるいは固定式の装置が外れたことに気づいた場合は、ご自身で修理を試みたり、市販の接着剤を用いたりしないでください。歯や歯肉を傷める原因となります。
当院受付までお電話いただき、ご来院の日程をお取りください。お電話でお受けできるのはご予約に関するお取り次ぎのみで、治療上のご相談やご判断は、ご来院のうえ、口腔内を拝見してから承っております。
このページの監修
尾崎 周作(歯学博士/東京科学大学大学院修了)
- 尾崎矯正歯科クリニック 院長
- 東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)咬合機能矯正学分野 臨床教授
- 日本歯科専門医機構認定 矯正歯科専門医
最終更新:2026年8月3日
当ページの内容は一般的な事柄についてのご説明です。診断や治療方針は、ご来院のうえ、口腔内を拝見してから承ります。
