症状と治療実績

下顎前突

下顎前突

下の前歯が上の前歯より前に出てしまっている状態です。会話や食事の際に、正しいあごの動きができにくく、滑舌が悪くなったり、食事の際に少しクチャクチャと音を立てながら食べてしまいやすくなります。

また上下の歯の接触状況も悪く、前歯や奥歯に負担がかかりやすく、歯の健康の上でも良い状況とは言えません。

下顎前突の原因は、骨格的に上あごと下あごに前後のズレがある場合や、下の歯が前にせり出していたり、上の歯が後ろに引っ込んでいることで、反対咬合が生じていることなどが考えられます。

下顎前突症という診断

まず、よく似た二つの言葉を整理します。「反対咬合」は、前歯のかみ合わせが上下逆になっている状態を指す言葉。「下顎前突」は、下あごが前方に位置しているという骨格・歯列の関係を指す診断名です。両者は多くの場合セットで現れますが、別の概念です。前歯の先端どうしがちょうど当たる境界的な状態は、切端咬合と呼ばれます(→ 切端咬合)。

診断では、頭部X線規格写真で上下のあごの前後的な位置関係を計測し、上下前歯の水平的な距離(オーバージェット。受け口ではこの値がマイナスになります)や、歯の傾きによる代償の程度を評価します。「どのくらい骨格のズレがあり、そのうちどれだけを歯が隠しているか」——この分解が、治療方針のすべての出発点です。

治療の三つの道

一つめは、成長期の対応。 下あごの成長はコントロールが難しい一方、上あごの成長を促してバランスを整えるなど、成長の力を借りられるのはこの時期だけの選択肢です。時期を見極めた段階的な計画になります。

二つめは、歯の移動による補正(カモフラージュ治療)。 骨格のズレが中等度までなら、歯の移動でかみ合わせと口元の改善を図れる場合があります。実例は、反対咬合・受け口のページの症例01——「手術をしたくない」というご希望に、限界の説明とともに応えた治療——をご覧ください(→ 反対咬合・受け口)。

三つめは、外科手術を併用する道。 骨格のズレが大きい場合、下顎前突は、健康保険が適用される顎変形症治療の代表的な対象です。手術によって骨格のズレそのものを改善し、矯正治療でかみ合わせを仕上げます(→ 顎変形症治療・外科矯正 サージェリーファーストアプローチ)。

どの道が適するかは計測値が土台になりますが、最後に道を選ぶのは、ご本人です。当院は、それぞれの道で見込める範囲・期間・費用・リスクを並べてご説明します。

「成長が終わるまで」の意味

骨格性の下顎前突では、「成長が終わってから最終的な治療方針を決めましょう」というご説明をすることがあります。下あごの成長は身長の伸びが落ち着く頃まで続くとされ、成長の途中で外科の要否を確定することはできないためです。男子は女子より成長のスパートが遅く長い傾向があるとされ、見極めの時期にも個人差があります。

ただし、「終わるまで待つ」は「何もしない」ではありません。定期的に資料を採って成長の向きと量を記録し、必要な時期に必要な手だけを打つ——観察もまた、計画の一部です。長い経過になるからこそ、早い段階から記録を始める価値があります。

よくいただくご質問

Q. 大人になれば自然に治ることはありますか?

A. 永久歯列が完成した後の下顎前突が自然に改善することは、期待しにくいとされています。むしろ成長期には進む方向に働く場合があるため、経過の記録と適切な時期の対応が大切です。

Q. 保険で治療できると聞きましたが、本当ですか?

A. 外科手術を併用する顎変形症治療に該当する場合は、健康保険が適用されます。適用には要件があり、指定医療機関での治療となります。当院はその指定を受けています(→ 顎変形症治療)。

Q. 治療を始める前に、親として何かできることはありますか?

A. 咬むときに下あごを前へずらす癖、口呼吸などに気づいたら、メモしてご相談の際にお伝えください。機能性のタイプでは、癖への対応が治療の入口になることがあります(→ MFT-歯並びに影響する癖の改善)。

下顎前突症という診断

まず、よく似た二つの言葉を整理します。「反対咬合」は、前歯のかみ合わせが上下逆になっている状態を指す言葉。「下顎前突」は、下あごが前方に位置しているという骨格・歯列の関係を指す診断名です。両者は多くの場合セットで現れますが、別の概念です。前歯の先端どうしがちょうど当たる境界的な状態は、切端咬合と呼ばれます(→ 切端咬合)。

診断では、頭部X線規格写真で上下のあごの前後的な位置関係を計測し、上下前歯の水平的な距離(オーバージェット。受け口ではこの値がマイナスになります)や、歯の傾きによる代償の程度を評価します。「どのくらい骨格のズレがあり、そのうちどれだけを歯が隠しているか」——この分解が、治療方針のすべての出発点です。

治療の三つの道

一つめは、成長期の対応。 下あごの成長はコントロールが難しい一方、上あごの成長を促してバランスを整えるなど、成長の力を借りられるのはこの時期だけの選択肢です。時期を見極めた段階的な計画になります。

二つめは、歯の移動による補正(カモフラージュ治療)。 骨格のズレが中等度までなら、歯の移動でかみ合わせと口元の改善を図れる場合があります。実例は、反対咬合・受け口のページの症例01——「手術をしたくない」というご希望に、限界の説明とともに応えた治療——をご覧ください(→ 反対咬合・受け口)。

三つめは、外科手術を併用する道。 骨格のズレが大きい場合、下顎前突は、健康保険が適用される顎変形症治療の代表的な対象です。手術によって骨格のズレそのものを改善し、矯正治療でかみ合わせを仕上げます(→ 顎変形症治療・外科矯正 サージェリーファーストアプローチ)。

どの道が適するかは計測値が土台になりますが、最後に道を選ぶのは、ご本人です。当院は、それぞれの道で見込める範囲・期間・費用・リスクを並べてご説明します。

「成長が終わるまで」の意味

骨格性の下顎前突では、「成長が終わってから最終的な治療方針を決めましょう」というご説明をすることがあります。下あごの成長は身長の伸びが落ち着く頃まで続くとされ、成長の途中で外科の要否を確定することはできないためです。男子は女子より成長のスパートが遅く長い傾向があるとされ、見極めの時期にも個人差があります。

ただし、「終わるまで待つ」は「何もしない」ではありません。定期的に資料を採って成長の向きと量を記録し、必要な時期に必要な手だけを打つ——観察もまた、計画の一部です。長い経過になるからこそ、早い段階から記録を始める価値があります。

よくいただくご質問

Q. 大人になれば自然に治ることはありますか?

A. 永久歯列が完成した後の下顎前突が自然に改善することは、期待しにくいとされています。むしろ成長期には進む方向に働く場合があるため、経過の記録と適切な時期の対応が大切です。

Q. 保険で治療できると聞きましたが、本当ですか?

A. 外科手術を併用する顎変形症治療に該当する場合は、健康保険が適用されます。適用には要件があり、指定医療機関での治療となります。当院はその指定を受けています(→ 顎変形症治療)。

Q. 治療を始める前に、親として何かできることはありますか?

A. 咬むときに下あごを前へずらす癖、口呼吸などに気づいたら、メモしてご相談の際にお伝えください。機能性のタイプでは、癖への対応が治療の入口になることがあります(→ MFT-歯並びに影響する癖の改善)。

このページの監修

尾崎 周作(歯学博士/東京科学大学大学院修了)

  • 尾崎矯正歯科クリニック 院長
  • 東京科学大学(旧 東京医科歯科大学)咬合機能矯正学分野 臨床教授
  • 日本歯科専門医機構認定 矯正歯科専門医

最終更新:2026年8月3日

当ページの内容は一般的な事柄についてのご説明です。診断や治療方針は、ご来院のうえ、口腔内を拝見してから承ります。

あわせてご覧ください